デザインと聞いて、モノの見た目や機能を思い浮かべる人は多いだろう。だが『デザイン理論 問題解決と未来構想の先へ』(水野大二郎/水内智英/山崎泰寛編、フィルムアート社)が扱うのは、人間が自らデザインしたものにデザインし返されるという、実存に関わる問題としてのデザインである。
進みゆく温暖化、絶えない戦争、広がる格差。「問題解決」や「未来構想」といった従来の概念では立ち行かない「厄介な問題」に人類は直面している。本書はこの状況に対し、二十世紀以降の理論を俯瞰し、技術哲学からウェルビーイング、アクティビズムまで多彩なキーワードで実践の現在地を照らす。デザインとは生活のあらゆる次元で実践できる営みなのだ。
読者と共に考える「来たるべきデザイン理論」
ただし本書は過去の議論の整理にとどまらない。「来たるべきデザイン理論」は著者たちが与えるものではなく、読者が共に考えるものだとして、そのための見取り図に徹している。章と章が呼応し合う構成も、多元的な思考を促す仕掛けになっている。
誰もがデザインする時代にあって、これからデザインを学ぶ人はもちろん、世界を覆う閉塞感を破る手立てを探すすべての人に開かれた一冊だ。(2420円)
評者はドミニク・チェン(情報学研究者・早稲田大教授)。1981年生まれ。著書に『未来をつくる言葉』など。近年は、「発酵」の概念に基づきながら、テクノロジーや人間、自然との関係性についても研究。



