100年以上の歴史を持つ映画館10館を訪ねるルポ『百年映画館』書評
百年映画館 藤井克郎著 書評 歴史ある10館を訪ねる

『百年映画館』(藤井克郎著、草思社・2420円)は、100年以上前に建てられた映画館を中心に、10館を探訪するルポだ。著者は新聞の映画担当記者として30年以上取材を重ねてきた。

現存する最古の映画館

最も古い館は長野市の「長野相生座・ロキシー」。明治25年に芝居小屋として建てられ、戦後に映画専門館となる。現在も3劇場で1日約10作を上映する。デジタル上映が中心だが、年に一度はフィルムで「男はつらいよ」を上映するという。

新潟県上越市の「高田世界館」は、明治44年の建築。昭和50年に成人映画の専門館となり、近寄りがたい雰囲気だった。しかし、平成21年にまちづくりのNPO法人が運営するミニシアターとして復活。昔のままの館内で映画を楽しめる。

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地域に根ざす映画館の取り組み

他にも、北海道浦河町の「大黒座」(大正7年)、群馬県高崎市の「高崎電気館」(大正2年)、兵庫県豊岡市の「豊岡劇場」(昭和2年)などが登場する。

映画館は昭和30年代前半をピークに入場者が減少。その後もレンタルビデオや配信の影響を受け閉館数が増えた。本書に登場する映画館も、休館を経て再開した館が多い。新型コロナウイルス禍も大きな打撃だった。しかし、運営者たちは必死に映画館を守ろうとしている。それは映画館が地域の人が集まる拠点であり、まちが輝く契機になる場所だという確信があるからだろう。

学校に行きづらい子供たちの居場所として映画館を提供する(上田映劇)などのユニークな取り組みも紹介される。

約半世紀の休館を経て再開

福島県本宮市の「本宮映画劇場」は約半世紀の休館を経て、イベントでの上映を再開した。同館にしか残っていないカーボン式映写機による上映も行われる。この日のために館主はメンテナンスを続けてきた。

関係者の「みんなに知ってもらえば残したいという人も増えるはずです」という言葉通り、旅行がてらこれらの館で映画を見てほしい。本書には、居酒屋や温泉など旅の楽しみもたっぷり紹介されているのだから。

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