紺碧のアビタシオン第4回:大連に生まれた美貴子、日本の見ぬまま
紺碧のアビタシオン第4回:大連生まれの美貴子、日本の見ぬまま

窪美澄の連載小説「紺碧のアビタシオン」第4回が公開された。主人公・仲元美貴子が暮らすのは、大連という町。一九一五年、大正四年に生まれた彼女は、日本という国をまだ見たことがなかった。

洋館と煉瓦造りの官舎

美貴子が住む海関の官舎は、イギリス風のオレンジイエローの煉瓦造り。青空に映えるローズ色の屋根瓦、白い窓枠がアクセントになっている。家の前の道路は砕石コールタールで舗装され、埃も泥もない。

美貴子が生まれ育った家に和室はなく、畳を目にしたこともない。亡き母は「それはとても心が落ち着くお部屋なんですよ」と語っていたが、幼い美貴子には洋室以外の場所を想像するのは難しかった。

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大連の歴史と関東州

この土地は元々清国のものだったが、日清戦争後、大連と旅順はロシアの租借地となった。日露戦争に勝利した日本がポーツマス条約でロシアに代わり、この土地を自国のものとした。

日本はこの場所を「関東州」と呼び、関東総督府を置いて統治。南満州鉄道(満鉄)は大連に本社を設置し、大陸進出の足がかりとした。美貴子はこうした建物や室内装飾を見ることが好きだった。

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