美貴子が三年生になった年、妹が生まれた。父と二人で病院へ向かうと、母はベッドで静かに眠っており、隣には小さなゆりかごがあった。
父に促されて中をのぞくと、真っ赤な顔をした赤んぼうが、小さな拳を顔の横に置いて眠っていた。息をしているのかもわからないほどだった。
「美貴子の妹だよ。富美子と言うんだ」
その顔を見た美貴子は、亡くなった妹たちにあまりにも似ていることに驚き、この妹も突然姿を消すのではないかという恐怖にかられた。眠っている母や妹を起こさないよう、うつむいて静かに泣いた。
父の言葉と美貴子の不安
美貴子の様子に驚いた父は、彼女を抱き上げて病室の外へ連れていき、掌で頰の涙を拭った。父が「妹が生まれてうれしくないのかい?」と尋ねると、美貴子は首を横に振り、「富美子はすぐに死なない?」と問いかけた。父はその意味をすぐに理解し、目を赤くした。
病室から大きな泣き声が聞こえてくると、父は「死なないさ。あんなに大きな声で泣いている赤んぼうは絶対に死なない」と言った。しかし美貴子は、妹たちも毎日元気に泣いていたのに突然亡くなったことを思い、安心できなかった。
小さな母親としての日々
母と妹が退院してから、美貴子は富美子の小さな母親となった。ゆりかごで泣いているとすぐに母を呼びに行き、母が「少しくらい泣かせていても大丈夫。肺の運動ですよ」と言っても、「富美子が苦しいかもしれないから」と聞かなかった。
自然におむつ替えを覚え、ミルクの後には背中を擦ってげっぷを出した。はいはいの後を追い、つかまり立ちを覚える頃には転倒を防ごうと常に後ろにいた。小学校から帰るとすぐに富美子のもとへ飛んでいき、細々とした世話を続けた。