第175回芥川賞・直木賞が15日、芥川賞に小砂川チトさん(36)の「ゾンビ回収婦」(群像5月号)、直木賞に朝倉かすみさん(65)の『けんぐゎい』(光文社)が選ばれた。還暦を過ぎて大きな賞を射止めた朝倉さんに、いまの心境を寄稿してもらった。
「疲れすぎない」を心がけて
『けんぐゎい』という小説を書いて第175回直木三十五賞をいただくことになり、それに伴いエッセーのご注文が複数あり、そっくり全部受けた。内容が被らないように、『けんぐゎい』書き始めから受賞までを順々に書いている最中だという。
『けんぐゎい』は文芸誌「小説宝石」での2年ちょっとの連載を終了。ストーリーラインは決まっていたが、時代小説初心者で書くのに時間がかかり、毎回ほんの少ししか原稿を渡せなかった。同時進行していた仕事が2本あったという事情もある。小説家としては珍しい状況ではなく、仕事があるのはありがたいことだと述べている。
公式おバアさんとしての自覚
朝倉さんは現在65歳。日本の法令において前期高齢者と呼ばれ、「公式おバアさん」だと自らを表現する。「体力気力ともに充実されていて、足取り軽く歩ける方もいらっしゃいますが、残念ながら私は『そっち』じゃない」と語る。もともと体力がなく、数年おきに鬱病を発症することもある。普段は明るく機嫌よく楽しそうに見えるかもしれないが、それもまた「そういう人」でもあるという。
鬱病の発症をイメージするとき、色水に白い紙の栞を浸す映像が浮かぶという。栞がゆっくり静かに色を吸い取っていくようすが頭の片隅にあり、栞が濃く染まるほど「ヤバい」と感じ、なるべくそうならないよう用心している。発症するときはするが、体調管理は大事だと強調した。
怠け者精神で休む
朝倉さんは「とにかく疲れすぎないこと、疲れたと思ったら休むこと」を心がけている。「もっとできるはず」「だらけてるだけ」と自分にハッパをかける方向に引っ張られそうになるが、「怠け者でどこが悪い」「怠け者ばんざい!」の心意気で休んでいるという。
そんな調子で仕事をしているため、一本ずつ仕上げていくスタイルを目指しながらも、気がつくと同時進行になってしまう。体たらくながら、しょうがないと思っている。また、今回の受賞で急に仕事が増えるかもしれないが、「怠け者精神でやらせてもらいますよ、よろしくです」と締めくくった。
(作家)
あさくら・かすみ 1960年生まれ。北海道出身。2004年に「肝、焼ける」で小説現代新人賞。19年に『平場の月』で山本周五郎賞を受ける。著書に『にぎやかな落日』『よむよむかたる』などがある。



