賞金1000万円のマンガ家は会社員だった!『最前線結婚』よもぎもちとの挑戦
賞金1000万円のマンガ家は会社員だった!『最前線結婚』よもぎもちとの挑戦

『LINEマンガ webtoon大賞 2025』で、よもぎもちと氏の『最前線結婚』が最優秀賞に輝いた。賞金1000万円に加え、連載確約とグローバル配信権を手にした。受賞作の裏側や、スマートフォン時代の読者を引き込むウェブトゥーン表現について、本人に話を聞いた。

ロマンス×バトルでつかんだ最優秀賞

2026年6月30日に最終選考結果が発表された『LINEマンガ webtoon大賞 2025』。トップに選出された『最前線結婚』は、王道のロマンスファンタジーにダイナミックな「バトル」の要素を融合させた意欲作だ。舞台はゴールド王国。辺境伯令嬢クリステル・ジュエルは国境で過ごしていたが、第一王子との婚約話が舞い込む。王妃として国を守る決意をするも、第一王子は歓迎していないようで……というのが本作のあらすじだ。

戦う強きヒロインの生き生きとした表情や、スマートフォンでの閲覧に最適化された縦読み(ウェブトゥーン)ならではのテンポの良さが、特別審査員から「一線級の作品にも通じるクオリティ」と絶賛された。

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小学生の夢から、1000万円受賞クリエイターへ

結果を知ったときの気持ちについて、よもぎもちと氏は「とても驚きました。数ある作品の中から選んでいただけて、本当にうれしかったです。賞金1,000万円という大きな賞をいただくプレッシャーを感じつつも、それに見合う作品を制作できたことをとても喜ばしく思っています」と語る。賞金の使い道は「正直、まだ検討中ですが、作画に使う素材や機材、パソコンやペンタブレットなどに使いたいと考えています。あとは作業デスクや椅子も新調して、より良い制作環境を整えられたらいいですね」と明かした。

2025年にはLINEマンガ・インディーズの『webtoon20コマ作画チャレンジ』でも作画賞と佳作を受賞している。ウェブトゥーンに挑戦しようと思ったのは「2013年頃に初めてウェブトゥーンを読んだことがきっかけ」だといい、「縦にスクロールして読む新鮮さや、スクロールを生かした躍動感のある演出に感激して、自分でも描いてみたいと思うようになりました」と振り返る。

マンガを描き始めたのは「小学生の頃にそういう職業があることを知ったのがきっかけ」で、インターネットが普及し始めてからはお絵かき掲示板にイラストやマンガを投稿するようになった。高校では美術、専門学校ではデザインを学び、その後は広告代理店でデザインの仕事をしながら、趣味でインターネットやSNSに作品を発信し続けている。

主人公は“ロマファンらしくない令嬢”を目指した

受賞作『最前線結婚』はどのように生まれたのか。よもぎもちと氏は「もともと少年マンガのようなバトルアクション作品が好きで、これまで描いてきた絵もロマンスファンタジーとはかけ離れたものでした。ところが、初めてロマンスファンタジーを読んだときに、絵画のような演出や美しい登場人物、豪華な装飾に惹かれて、『自分でも描いてみたい!』と思ったんです」と話す。「ロマンスファンタジーも描きたい。でも戦闘シーンも描きたい。それなら女主人公に戦ってもらって恋愛もしてもらおう」と考え、構想を練り始めたという。

タイトルには「戦いの最前線で結婚式を挙げるようなロマンスを描きたいという思い」が込められている。主人公クリステル・ジュエルは“戦う女主人公”をコンセプトにした強くてかっこいい女性で、「一番こだわったのは、ロマンスファンタジーのお嬢様らしくない表情でしょうか(笑)。感情がはっきり伝わるように表情を描き、セリフも含めて“今、主人公が何を考え、何を感じているのか”が読者に伝わるよう意識しました」と語る。

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読者投票や審査を通じて印象に残ったことについては「読者の方が作品にコメントを残してくださったことは、本当にうれしかったです。感想を書いていただくこと自体がとても貴重なことなので、感謝しています。また、一次審査を通過した作品はすべて拝見しましたが、本当に個性豊かで、とても面白かったです。自分にはない演出や発想がたくさんあり、見惚れてしまうことも多く、『本当に良いコンテストだな』と感じました」と話した。

「スマホ一画面」で読ませるウェブトゥーン演出術

ウェブトゥーンならではのテンポや見せ方について、よもぎもちと氏は「意識したのはスマホの画面に収まる情報量です。一画面に情報を詰め込みすぎず、吹き出しの位置やコマ間、オノマトペなども、文字を読むときに違和感がないよう配置しました。人はスマホを見るとき、画面中央あたりに視線が集まりやすいと聞いたことがあったので、見せたい場面や読んでほしい内容が中央に収まるよう演出しています」と説明する。

横読みマンガとの違いについては「横読みは、見開きを使ったダイナミックな表現が魅力です。スマホで言えば2画面分を使うような迫力のある演出ができます。一方、縦スクロールでは、どこまでいってもスマホ一画面の大きさでしか演出できません。上に流れた絵と、下から現れる絵を同時に見せることもできないので、そこが難しいところです。ただ、縦スクロールにはアニメーションのような演出ができたり、縦長の構図を生かして奥行きやグラデーションのある表現ができたりと、横読みとはまた違った魅力があります。その表現力の高さが一番面白いところだと思っています」と語る。

「時間を使ってもらう競争」の時代、それでもマンガを届けたい

近年では若年層の“マンガ離れ”も指摘されている。これについて「マンガ離れは、ある意味では仕方のないことだと受け止めています。今はマンガだけでなく娯楽全体が飽和していて、“どれだけ時間を使ってもらえるか”の競争になっています。時間をかけて読むマンガは、その中で選んでもらうのが簡単ではありません。だからこそ、短い時間の中でも読者を引き込める演出や物語づくりが、より重要になっていると感じています」と述べた。

今回の受賞作はグローバル配信も決まっており、「日本だけでなく世界中の方に読んでいただけるのは、本当に素晴らしいことだと思っています。多くの方に作品を楽しんでもらえることは自分の自信にもつながりますし、日本のウェブトゥーンを盛り上げる一助になれたらうれしいです」と期待を語る。

最後に、連載を楽しみに待つ読者へ「今回受賞した『最前線結婚』をもとに、新たな作品を構想中です。連載開始まで少しお時間をいただきますが、読者の皆さんに楽しんでいただける作品を届けられるよう、全力で制作してまいります。作品を見かけた際は、ぜひ読んでいただけたらうれしいです」とメッセージを送った。