タイ国鉄(SRT)が日本から導入した元JR東日本のキハ40系気動車が、バンコク近郊で運行を開始した。日本国内で約40年にわたって活躍した車両が、タイの地で再び息を吹き返した背景には、現場技術者の創意工夫と、タイ国鉄の中古車両導入を推進するキーパーソンの存在があった。
復活までの道のり:現場の技術力が支えたカスタマイズ
キハ40系は日本国内での引退から5年を経てタイで再デビューした。しかし、中古車両を現地で運用するには、単に輸入するだけでは不十分だ。タイの気候や線路条件に合わせた改造が必要であり、古い車両ならではの課題も多い。タイ国鉄の技術者たちは、車両の状態を一つ一つ確認しながら、エンジンやブレーキシステムの調整、座席のビニール地への張り替えなど、地道な作業を積み重ねた。
カラーリングと日本語表記の意図:遺産としての保存
キハ40系の外観は、日本時代の赤色を基調とした塗装がほぼそのまま残されている。タイ国鉄の車両導入責任者であるアディソン氏は、この理由について「赤色はSRTのコーポレートアイデンティティの一部であり、もともとの車両デザインによくマッチしていたため、ほぼそのまま残すことにした」と説明する。また、車内に残る日本語の案内表示については、「これらを剥がそうとするとオリジナルの内装設備を傷つけてしまうリスクがあった。それに加え、車両が持つ『日本生まれの遺産』としての側面を一部残したいという思いもあった。日本からの観光客が、かつて日本で現役だった頃に思いを馳せ、懐かしんでいただけるのではないか」と語る。
今後の展望:新造車両導入の可能性
中古車両の導入が進む一方で、タイ国鉄は将来的な新造車両の導入も視野に入れている。アディソン氏は「新型車両を導入する計画はあるが、政府からの承認を待つ必要がある」と述べ、日本や他の国からの新造ディーゼルカー、機関車、客車などの導入可能性について言及した。キハ40系のような中古車両は、コスト面では有利だが、長期運用には限界がある。そのため、タイ国鉄は中古と新造のバランスを考慮しながら、車両更新を進める方針だ。
タイ国鉄の中古車両戦略:キーパーソンの役割
アディソン氏は、タイ国鉄における中古車両導入のキーパーソンとして、現場の技術者と連携しながら車両選定や改造計画を立案している。同氏の高い技術力と創意工夫が、キハ40系の復活を可能にしたと言える。しかし、現場の情熱だけでは対処しきれない困難もあった。特に、日本とタイの鉄道規格の違いや、部品調達の課題は、今後の運用においても継続的な課題となるだろう。
キハ40系の運行開始は、タイの鉄道ファンや日本からの観光客にとって大きな話題となっている。車内に残る日本語の表記や、日本時代の面影を残すデザインは、乗客に懐かしさと新鮮さを同時に提供している。タイ国鉄は、この車両を観光資源としても活用し、沿線地域の活性化につなげたい考えだ。



