NTTドコモがオンライン専用プラン「ahamo」の通信量を40GBに増量するキャンペーンを実施したことが、大きな話題となった。サブブランドやオンライン専用プランで激しいキャンペーン合戦を繰り広げているのには、競争激化だけにとどまらない各社の試行錯誤もありそうだ。
中容量帯で終了日未定のキャンペーンが続発
2025年半ばから、KDDIやソフトバンクら携帯電話大手が、従来の新規顧客獲得重視の姿勢を変えて既存顧客重視の姿勢を打ち出すようになった。それにもかかわらず、2026年の6月から8月にかけては、むしろ新規顧客獲得に力を入れるかのような、終了日未定のキャンペーンが相次いで打ち出されている。
その舞台となっているのは、主としてサブブランドやオンライン専用プランが担っている中容量帯の料金プラン。先陣を切ったのはKDDIの「UQ mobile」ブランドで、2026年6月25日より提供されている「UQコミコミおトク割」だ。
その内容については以前の連載でも触れているので簡単に振り返ると、月額3828円で35GBのデータ通信量や「Pontaパス」などが利用できる「コミコミプランバリュー」の新規契約者に対し、13カ月間にわたって月額660円を割り引くもの。「au PAY ゴールドカード」を持っていれば、14ヵ月目以降も割引を継続できる。
次に動きを見せたのがソフトバンクの「ワイモバイル」ブランドで、2026年7月17日に実施されている「超!おトク割」だ。こちらはワイモバイルの料金プラン「シンプル3」のうち、中~大容量の「シンプル3 M」(月額4378円、データ通信量30GB)と「シンプル3 L」(月額5478円、データ通信量35GB)を新規契約、あるいはプラン変更した人に対し、加入翌月から1年間、月額料金を1100円引きするものだ。
加えて既存の「PayPayカード割」と併用して適用できるため、「PayPayカード ゴールド」契約者であれば1年間はシンプル3 Mで月額2508円、シンプル3 Lで月額3608円での利用が可能だ。
NTTドコモもそれら競合に負けじと、2026年8月1日より「データ増量おためしキャンペーン」を実施している。こちらはオンライン専用の「ahamo」に加え、小容量の「ドコモ mini」にも適用されるキャンペーンであり、新規・既存を問わず全ての契約者に対し、キャンペーン期間中に通信量を増量するものだ。
具体的にはahamoが毎月10GB増量され40GB、ドコモ miniは毎月2GBが増量され、10GBのプランであれば12GB、4GBのプランであれば6GBのデータ通信量が利用できる。
難しい競争環境で市場に答えを求める各社
ただ各社のキャンペーン内容を見るに、狙いが必ずしも共通している訳ではないように見える。最初にキャンペーンを仕掛けたKDDIは、通信品質低下が指摘されるNTTドコモや楽天モバイルから顧客を奪う狙いが強いだろうが、他社は必ずしもその対抗策だけが狙いという訳ではない様子だ。
実際、NTTドコモの代表取締役社長である前田義晃氏は、2026年8月6日のNTT決算説明会で「データ増量おためしキャンペーン」を実施した狙いを問われた際、「(通信量を)上げてみてどんな使い方になるのか検証しようと。それを今後のサービスに向け検証しようというのが実際のところ」と答えている。
キャンペーンで注目されたahamoは、2024年に通信量を30GBに増やしてから間もなく2年が経過しようとしているが、通信トラフィックが毎年20%のペースで伸びており、コンテンツのデータ自体も増加傾向にあるという。一方で昨今のインフレにより、機材や人件費などネットワーク運用にかかるコストは上昇しており、5年以上料金を見直していないahamoなどは、今後のサービスのあり方自体が問われていることも確かだろう。
それだけに今回のキャンペーンは、そのままなし崩しにサービスを継続する料金施策というよりも、あくまで検証の狙いが強いものだという。実際、同キャンペーンの報道発表資料には「キャンペーン対象となるお客さまには、別途本キャンペーンによるご利用状況や体感の変化についてお聞かせいただくアンケートを実施予定です」と記述されており、顧客の意見や要望を募って今後のサービスに生かす狙いが強いことが分かる。
一方のソフトバンクは2026年8月4日の決算説明会で、同社の代表取締役社長執行役員 兼CEOである宮川潤一氏は、ahamoの通信量を40GBに増量するNTTドコモのキャンペーンに言及し「現時点で(対抗策を)仕掛けるつもりはない。中容量帯はバトルが激しく、これ以上(競争が)激しさを増してもあまり変わらない」と説明。ワイモバイルは月額550円で通信量を2~5GB増量する「データ増量オプション」を提供しており、そちらで十分対抗できるとの考えを示していた。
それにもかかわらずワイモバイルのキャンペーンを打ち出したのはなぜかといえば、今回のキャンペーンで月額1100円を割り引くという点が大きなポイントになるだろう。実はワイモバイルは今回のキャンペーンを利用しなくても、月額1100円から1500円の割引が受けられるサービスが複数用意されている。
具体的には、指定の固定ブロードバンド回線とのセット契約で月額1500円が値引きされる「おうち割 光セット(A)」や、家族と複数回線契約することで、2回線目以降が月額1100円割り引かれる「家族割引サービス」、対象の電力サービスの利用で最大24ヵ月、月額1100円が割り引かれる「おうち割 でんきセット(E)」などだ。それゆえ今回の割引施策は、単身者などをターゲットに、セット契約や家族契約がなくても1年間は同等の割引がシンプルに受けられることがコンセプトであることが分かる。
ただ、セット契約などによる複雑な割引がないシンプルさというコンセプトは、競合のahamoやコミコミプランバリュー、ソフトバンクでいえば「LINEMO」に近いものだ。しかもソフトバンクの場合、割引と店舗でのサポートを除けば、ワイモバイルとLINEMOの料金プラン内容が比較的近く、重複気味であることも確かだ。
KDDIがahamo対抗プランとなるコミコミプランバリューをUQ mobileで提供していることを考えれば、よりブランド力が強く顧客の多いワイモバイルのシンプル3 M/LをLINEMOの「LINEMOベストプランV」に代わる、ahamo対抗プランと位置付けることも十分考えられる。それだけに今回のキャンペーンは、ワイモバイルの料金プランの位置づけを変えるための布石と見ることもできそうだ。
各社の一連の施策は、終了時期未定ではあるものの現時点ではあくまで恒久的ではないキャンペーンに過ぎず、今後中容量帯の料金プランをどうしていくのかはまだ見えない部分が多い。だが各社が具体的な料金施策ではなくキャンペーン施策で争っている点からは、中容量帯での戦略面で迷いが生じており、市場に答えを探している様子を明確に見て取ることができそうだ。



