AI駆動開発で実装が5日分→2時間に? パーソルクロステクノロジーが見せる生成AI活用の新常識
AI駆動開発で実装5日分が2時間に? 生成AI活用の新常識

生成AIを導入しても、実証実験(PoC)の段階で足踏みしたり、個人の作業時間がわずかに短縮されるだけで期待したほどの成果が得られない企業は多い。そうした中、パーソルクロステクノロジーはAI駆動開発にいち早く取り組み、成果を挙げている。同社の安藤崇徳氏(システムインテグレーション本部 マネージャー)と曽根田雄一氏(DXソリューション本部)に、AI駆動開発の実践方法と今後のシステム開発の在り方を聞いた。

生成AI導入が「PoC止まり」になる3つの理由

「生成AIと聞くと何でもできると思われがちですが、実際には『個人のコーディングは楽になったものの組織的なインパクトはなかった』という声をよく聞きます。生成AIは導入するだけで魔法のように全てをこなしてくれるわけではありません。どのプロセスに組み込み、何をどう自動化するかなどの設計が必要です」(安藤氏)

曽根田氏は、AI駆動開発で十分な成果を得られない原因は3つのミスマッチにあると分析する。

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  • 1つ目は、ツール導入と業務変革を混同している点。生成AIを導入するだけで満足し、業務プロセスや役割分担、評価制度まで踏み込んで変えていない企業がほとんど。ワークフローがそのままでは、個人の時短に留まるのは当然といえる。
  • 2つ目は、推進体制が部署単位になっている点。成功事例が横展開されず、部署ごとにPoCが乱立する事態は避けるべきだ。
  • 3つ目は、AIの理解不足による期待値のミスマッチだ。

「AIは、要件や指示の質で成果が大きく変わる『優秀だが扱いが必要なメンバー』です。この点を理解せず『導入するだけで効率化できる』と期待してしまうと、ギャップが期待の裏返しとして跳ね返ってきます」(曽根田氏)

個人の時短で終わらせない組織戦略

AI駆動開発を個人の時短で終わらせないためには、組織横断的な知見集約と標準化が重要だと安藤氏は語る。

「生成AIの技術進化は非常に速いです。部署ごとに検証・導入すると、コスト面だけでなく、品質や展開スピードの面でも問題が出やすくなります。検証や実装は小さい範囲で始めるとしても、そこで得られた成功事例や失敗の教訓、有効なプロンプトなどを『組織全体のナレッジ』として蓄積する仕組みづくりをお勧めします。私たちもAI駆動開発を全社的に取り組むべきテーマとして捉え、組織横断的な推進を重視しています」

生成AIは、指示内容で出力のクオリティーが変わる。そのため、ただAIを導入しただけでは「もともと仕事が速い人がもっと速くなっただけ」になり、チーム全体の底上げにはつながらない。曽根田氏は生成AIの活用スキルは検索スキルに似ていると話す。

「『ググる』のが基本だった時代から、検索スキルには個人差がありました。AIの回答が本当なのかどうか判断する力も、ネットの情報の真偽を判断する力に似ています。私たちは検索のコツを共有していたのと同様に、AIの使い方を共有するようにしています」

実装が5日分から2時間に短縮された現場

こうした取り組みによって、これまでの常識を覆す効果が出始めている。

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「特にコーディング領域で効果を感じていて、従来の2〜3倍程度の生産性向上を感じる場面もあります。要件や前提条件をAIに適切に伝えることで、たたき台を短時間で作成できます。レビューもAIと対話しながら検討点を深掘りできるので助かっています。これまでは他人のコードを理解するところで疲れてしまって、判断が鈍ることもありました。今はAIに変更内容の整理やリスクの洗い出しを任せられるので、設計意図やビジネスロジックの妥当性など、より本質的な観点に集中できるようになりました」(安藤氏)

「従来は5日かかっていた機能実装が2〜3時間で完了するようになりました。その分、設計やレビュー、意思決定に時間をかけられます。ただし、指示の方向性にぶれがあると広い範囲で品質が低くなるので注意が必要です。コードを読む力、要件や設計の整理、整合性を判断する力がこれまで以上に求められると思います」(曽根田氏)

受入直前の要望にも迅速に対応できる体制

単にツールを導入してコードを書かせるだけでは、システム開発全体の効率は頭打ちになる。パーソルクロステクノロジーは上流工程にAIエージェントを搭載した統合開発環境であるAmazon Web Services(AWS)の「Kiro」を取り入れて、仕様を起点に設計・実装・テストにつなげる「仕様駆動開発」に取り組んでいる。

要件を整理して顧客とレビューした後、設計内容を作成してエンジニアが確認する。適切なタスクに分解して、AIを活用しながら実装やテストコードを作成する。まだ取り組み始めた段階だが、仕様、設計、実装、テストのつながりが見えやすくなり、認識合わせやレビューの精度向上につながる手応えがあるという。

こうした実装は、実際の案件で成果を挙げている。ある案件で、チャット型生成AIに加えて自律型AIエージェントも運用可能な基盤を開発した。その際、開発プロセスにAI駆動開発を取り入れたことで、開発の効率化はもちろん顧客の要望に対する柔軟性が大幅に向上した。

システムの受け入れ段階で「UIを変えたい」などの要望が出た場合、従来は「システム開発の次のフェーズまで時間をもらうことが多かった」と曽根田氏は語る。AI駆動開発に取り組み始めてからは、こうした受入直前の細かな要望にも柔軟かつ迅速に対応できるようになった。

AWSと協業して、AI駆動開発の高度化も行っている。AWS CDK(Cloud Development Kit)をインフラ構築領域に導入したことで、設計、実装、テスト、環境構築を一気通貫で実施できるようになった。これまで多くの事前調査や検証、実装工数が必要だった技術難易度の高い案件でも迅速に開発できるようになり、顧客への提供価値が向上しているという。

AI駆動開発はエンジニアをどう変えるか

AI駆動開発がシステム開発の前提となりつつある中、これからの時代に求められるエンジニアのコアスキルとは何か。両氏は「本質的な問題を見抜く力」と「評価する力」を挙げる。

「実装などにかかる時間を圧縮できれば、お客さまの目的や業務課題を理解するための時間を増やせます。『本質的な問題は何か』『どうすればより価値の高いシステムになるか』を考えることが、エンジニアによる価値創出の中心となるでしょう」(安藤氏)

「コーディング能力そのものの相対的な価値は下がっても『どうやって実現するのか』『どのライブラリをどう使うべきか』『その設計で合っているのか』といった目利きの視点は必要です。単純な作業はAIに代替されますが、AIの出力を正しく評価する力の価値がより高くなると思います」(曽根田氏)

若手エンジニアにも、これまで以上にコードを評価する力が求められる。

「以前から、検索して出てきたコードをカスタマイズして使っていたと思います。そこがAIに変わって、すぐにコードが出てくるようになっただけではないでしょうか。いずれにしても、出てきたコードの内容を理解してから開発を進めることが大切です。『取りあえず動くから』といって、出力されたコードを理解せずにコピペしてしまうと、コードを適切に評価できずスキルが伸び悩んでしまいます。

逆に、AIに振り回されずにコードの内容を適切に理解できれば、過去の世界よりも速く能力を伸ばせると思います。AIに何を作らせるか、出力の良しあしを判断できる人材が求められるでしょう」(曽根田氏)

自らが「実験台」となる強み

これからAI駆動開発に挑戦しようとする企業は、どこから手を付ければいいのか。両氏が口をそろえるのは、AIを理解すること、目的を明確にすることの重要性だ。

「まずはAIを正しく理解してできること/できないことを踏まえた上で、自社の業務やプロセスのどこに導入できるかを見極めるのが重要です。いきなり全てを解決しようとするのではなく、効果が見えやすい簡単な工程から小さく始めるのがよいと思います。ただし、PoCで終わらせないためにはセキュリティやガバナンスの整備、運用体制の組み込みなど、最初から実業務への適用や全社展開を見据えておく必要があります」(安藤氏)

パーソルクロステクノロジーが顧客のAI導入やAI駆動開発を支援する上での最大の強みは、自らが「実験台」になって効果を確認した施策を提供できることだ。曽根田氏は「当社の開発現場で試行錯誤して、うまくいった方法も、うまくいかなかった方法も両方体験した上で、その知見をお客さまに提供しています」と語る。顧客は無駄なリスクを負うことなく、安心してAI駆動開発や高度なシステム開発を進められる。

パーソルクロステクノロジーは、言われたシステムを作るだけの会社ではない。現場の技術者から経営層まで、さまざまな意思決定者の不安に寄り添いながら本質的な課題を解決する。顧客と共に成果を追う「共創のパートナー」として、新时代のシステム開発を力強く牽引する。