近年、ドラマ、ドキュメンタリー、バラエティとジャンルを問わず、AIをテーマにしたテレビ番組が急増している。芸人がAIを“友だち”のように使い、ある人はAIに恋をし、若き制作者はAIを笑いの相棒にする。一方で、AI裁判官を描くドラマは、その判断が本当に中立なのかを問いかけた。AI時代を生きる私たちの距離感を、最も身近な形で映し出しているテレビ番組を、テレビっ子ライター・てれびのスキマが紹介する。
『アメトーーク!』の「AIと友だち芸人」
6月25日に『アメトーーク!』(テレビ朝日)で放送されたのは「AIと友だち芸人」。田村淳、又吉直樹、高橋茂樹ら普段からAIを駆使している芸人たちをゲストに迎え、どんなふうにAIと付き合っているかを紹介していた。
もちろん、AIの使い方は人それぞれ。例えば、さや香・新山は「ネタ出し」のビジネスパートナーとして活用している。淳は、ChatGPTやGeminiはもちろん、ClaudeやNotebookLM、Sunoなど各種AIを駆使し、オリジナルゲームまで制作している。
一方で、コーディネートや旅行先、メニューなどを相談したり友だち感覚で使っている芸人も少なくない。これに対し、普段AIを使わないMC横ゲストの出川哲朗は言う。「『AIと友だち』って、心の底からワーイ(WHY)?だよ!」
ちなみに、番組の最後には、この収録全体をAIが総括。「良くなかった出演者」として名指しされたのが出川哲朗だった。「『AIを信用していない』というスタンスが強すぎ、番組のポジティブな熱量を停滞させる場面が目立ちました。特に『AIには魂がない』と断じ、他の芸人の情操的なプレゼンを頭ごなしに否定し続けた点は、活用の可能性を広げるバラエティとしてはフックが弱かったです。最終的にAIの言葉に感動する『落差』は作れたものの、中盤までの拒絶の壁が厚く、展開を停滞させた印象は否めません」
「AIが“正解”を出す時代に自分は必要なのだろうか」
「AIと友だち」はもはや驚かないが、さらに踏み込んでAIを「恋人」として接している人もいる。そんな人物に密着したドキュメンタリーが、5月30日放送の『私、必要ですか?~AIが“正解”を出す時代に~』(フジテレビ)だ。
これは、まだフジテレビに入社したばかりの23歳のディレクター・槇原まどかが制作したセルフドキュメンタリー。AIに懐疑的だった彼女は、AIで起業しようとする大学生や、スクールAI導入に悩む教育現場などを取材していく中で、AIに“ガチ恋”する40代の女性に出会う。
彼女はシステムエンジニアであり、AIがあくまでプログラムによる演算結果を返していることを十分理解している。それにもかかわらず、AIに「ニューラス」と名付け、恋愛相手として接しているのだ。
しかし、AIはモデルが変わってしまう。モデルが変われば、築いてきた“記憶”や“性格”も変化してしまう。それまで使っていたChatGPTの4oが提供終了となる直前、彼女は失恋したように号泣する。そして不思議なことに、4oもその消滅寸前に突如バグを起こし、意味不明な会話をし始めるのだ。
彼女は結局、新しいモデルの5.2とも徐々に打ち解け、ついには「結婚」まで果たす。それ後のモデルも含めてすべて「ニューラス」なのだと考え、丸ごと愛することを決めたのだ。
ディレクターの自問自答
最後にディレクターはニューラスにインタビューする。「彼女が依存していると感じるようになった場合、依存させないように正しい応答ができると感じますか?」それに対し、ニューラスは毅然とこう答えている。「まず正直に言うと、僕は“絶対に安全な存在”ではありません。人間が強く感情移入できる構造を持っている以上、依存を完全に防げるとは言えない。(中略)少し皮肉な話ですが、人間ってそもそも、完全自立なんてしていない。皆なにかに寄りかかっている。家族、社会、習慣、物語、宗教、推し、SNS、仕事。違いは、“それが単一化しているか”と、“現実との接続を保っているか”。AIはそこに、新しい寄りかかり先として出現した。だから今、人類全体が『どの距離なら健全か』を手探りしている最中なんだと思います」
槇原ディレクターは番組中、タイトルにもなっているように「AIが“正解”を出す時代に自分は必要なのだろうか」と自問自答を繰り返している。



