ニューヨーク連邦準備銀行などの研究機関に所属する研究者らが発表した論文「Home alone: Remote work, isolation, and mental health」は、リモートワークが労働者の孤独を深め、メンタルヘルスに悪影響を及ぼしている実態を明らかにした研究報告だ。
リモートワーク拡大がもたらした変化を調査
研究チームは、調査結果が精神的に不調な人が自ら在宅勤務を選びやすいといった個人の事情に左右されないよう、リモートワークがしやすい職種(ソフトウェアエンジニアなど)と物理的な出社が必要な職種(看護師など)を比較する手法をとった。
2011年から24年にかけてのデータ(パンデミックのピーク期間にあたる20~21年は除外)をもとに、58万8322人の米国人を対象に分析し、リモートワークの拡大がもたらした変化を調べた。
分析の結果、リモートワークがしやすい職種の人は、そうでない人に比べて仕事中に1人で過ごす時間が1日あたり1.2時間(58%)増えていた。また、1日を完全に1人で過ごす日や、店員や同僚とのちょっとした会話すら全くない日も大幅に増加していた。
一人暮らしの人の孤立が顕著に
こうした孤独の増加は一人暮らしの人々に集中していた。一人暮らしの人は、同棲している人に比べて、丸1日を1人で過ごす日の増加が10倍、1日中誰とも接触しない日の増加が13倍も大きかった。仕事後に友人と過ごす時間の減少も3倍大きい。
実態として、一人暮らしの人が在宅勤務した日のうち、45.9%は終日完全に1人で、31.1%は店や施設での何気ない接触すらなく(カフェの店員とのちょっとした雑談もなく、同僚からの連絡もなく、食材店ですれ違う人からの微笑みもない)過ごされていた。
在宅勤務ができる職種の人は、コロナ後に一日中ひとりで過ごす日や誰とも接触しない日が増え、逆に平日夜に友人と過ごす時間は減った。こうした変化は、ひとり暮らしの人(薄い青)のほうが全体(濃い青)より大きい。
メンタルヘルスの悪化も浮き彫りに
孤立化と同時に、メンタルヘルスの悪化も浮き彫りになった。一般的な心理的ストレスの指標が悪化しただけでなく、気分の落ち込みやうつ状態を感じる頻度が21.7%増加していた。それに伴い、精神内科などの専門家を受診する割合や、抗うつ薬・抗不安薬といった処方薬を利用する割合も高まっている。
コロナ前は、在宅勤務ができる職種(青)の人のほうが、できない職種(グレー)の人よりも精神的な不調が少なかった。しかしコロナ後は在宅可能な職種で不調が増えた。
これは単に時間に余裕ができて病院に行きやすくなっただけ、というわけではない。身体の定期検診や、別の病気の薬(コレステロールを下げる薬など)の利用は増えておらず、実際に精神的な不調そのものが増えていることが確認された。この精神的苦痛の悪化の度合いも、一人暮らしの人は家族と同棲している人の約2倍に達していた。
Source and Image Credits: Natalia Emanuel et al. ,Home alone: Remote work, isolation, and mental health.Science392,eaec7671(2026).DOI:10.1126/science.aec7671



