怒りをカネにするメディアの「終わらない炎上」アテンション・エコノミーの罠
怒りをカネにするメディアの炎上 アテンション・エコノミーの罠

現代社会において、なぜメディアはささいな出来事を「炎上」させ、人々の怒りをあおり続けるのか。ニュース収集力を失ったメディアとSNSが結託し、私たちの注目(アテンション)を搾取する実態とは。映画監督のケン・ローチ氏や経済思想家の斎藤幸平氏も絶賛し、「インターネット登場以後、最も影響力のある論客」と評される気鋭のイギリス人ジャーナリスト、アッシュ・サルカール氏による新著『「マイノリティ支配」の正体:分断される社会と文化戦争の罠』の第2章から一部を抜粋・再構成してお届けする。

怒りをカネにする「おしゃべり経済」

メディア業界では、5つの主要な構造的変化を経て、不要不急の話題が時事番組を埋め尽くす現状がもたらされた。1つ目は、業界横断的ないくつかの変化によって、自前でニュースを集めることが少なくなったこと。2つ目は、従来型の報道の減少によって生じたスペースを埋めるために、わずかに残ったニュースの周囲をドーナツ型の論評の輪で取り巻き、それを膨らませたこと。3つ目は、SNSが従来のメディアのあり方を完全に覆したこと。4つ目は、何をニュースと見るかの基準が低下したこと。そして最後に、ニュースに対する反応というものが、もはや単なる有益な背景情報にはとどまらなくなったことが挙げられる。

ニュースを収集するには費用がかかるが、論評するだけなら安上がりだし、ウケも取れる。SNSの普及で、こうした悪しき傾向はさらに進んだ。

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私たちの時間を奪うテクノロジー

SNSによって飢餓感や孤独感、疎外感が高まるほどに、ネット上の人的交流に刺激を受ける。アテンション・エコノミーは、ユーザーの注目を集めることで広告収入を得るビジネスモデルであり、炎上や過激なコンテンツが優先されやすい。サルカール氏は、この仕組みが人々の怒りを商品化し、社会の分断を深めていると指摘する。

マイクロイベントの病理と「つくられた怒り」

ささいな出来事が文化戦争にすり替わるメカニズムとして、サルカール氏は「マイクロイベント」の概念を提示する。些細な発言や出来事がSNSで拡散され、やがて大きな対立構造に組み込まれる。これにより、本来議論すべき重要な問題が置き去りにされ、人々のエネルギーが消耗される。

例えば、ある有名人の不用意な一言が、人種差別や性差別の問題に結びつけられ、大規模な炎上へと発展する。こうした「つくられた怒り」は、メディアとSNSの相互作用によって増幅される。

まんまと逃げおおせる真のエリートたち

サルカール氏は、こうしたアテンション・エコノミーの受益者は、真の権力者やエリート層であると主張する。彼らは文化戦争の火種をまきながら、自らは批判を浴びず、社会的・経済的優位を維持する。一般市民は些末な対立に忙殺され、構造的不平等や環境問題などの本質的な課題から目をそらされる。

同書は、ケン・ローチ監督や斎藤幸平氏から絶賛され、「インターネット登場以後、最も影響力のある論客」と評されるサルカール氏の代表作の一つである。SNS時代のメディア批判として、多くの示唆を与える。

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