国産マッチメーカーの日東社が、X(旧Twitter)に投稿したマッチ製造の動画が3000万回再生を超える大バズを記録した。「国産マッチでもバズりたい」というコメントとともに公開されたこの動画は、職人の手作業や機械による精巧な製造工程を映し出し、多くのユーザーの関心を集めた。
「マッチってまだ面白いんだ」と感じてほしい
日東社は今回のバズを受けて、「私たちの目標はバズることではありません。(中略)『マッチってまだ面白いんだ』と感じてくださる方が一人でも増えたなら、これ以上うれしいことはありません」とコメントを発表。同社はライターも取り扱っているが、マッチ箱の製造から始まり、マッチ本体の製造に至って100年以上の歴史を持つ。現在、国内でマッチを一貫製造できるメーカーはわずか2社で、日東社はマッチ産業の街として栄えた兵庫県姫路市に残る最後の1社である。
マッチの使い方すら知らない世代へ
日東社の公式サイトの「よくあるご質問」コーナーには、「どこに売っていますか?」「火の付け方を教えてください」「捨て方を教えてください」といった初歩的な質問が並ぶ。これは、マッチの使い方を知らない人が増えていることを如実に示している。ライターやバーナーなどの着火装置の普及により、使い捨てのマッチの立場は大きく変化したが、同社は「マッチ文化の新しい未来を灯していけたら」と願いを綴っている。
バズった企業は「きっかけ待ち」だった
「歴史と伝統を持ちながら、なかなか注目されない」というストーリーは、受け手に好印象を残す。こうした感情を呼び起こすコンテンツはSNSとの親和性が高く、逆に炎上を招くこともあるが、今回のような美談では心配は少ない。ただし、一方的に「知ってほしい」と訴えるだけでは不十分で、それを裏打ちする技術力や、派手でなくとも長年愛されてきたブランド力がなければ、見向きもされない。今回バズった企業の多くは、すでに十分な条件を満たしており、「見つかるべくして見つかる存在」であり、「きっかけ待ち」だったと言える。
SNSが生む新たなチャンス
そのきっかけは意外と身近にある。SNSなら、スマートフォンと社内の理解さえあれば、比較的簡単かつ安価に始められる。もちろんバズるかは別の話で、芽が出ない公式アカウントも多い。しかし、日東社のように、地道な技術と歴史を背景にしたコンテンツが、SNSを通じて大きな反響を呼ぶケースは増えている。同様の例として、国産マシュマロメーカーのエイワも、製造工程の投稿で14万の「いいね」を集めた。
バズの向こう側にあるもの
今回のバズは、単なる一過性の話題にとどまらず、日本のものづくりや伝統産業の価値を再認識させるきっかけとなった。問われるのは「バズの向こう側」、すなわち、注目を集めた後にどのように持続的な関心やビジネスにつなげるかだ。日東社は、マッチの新たな可能性を模索しながら、文化の灯を絶やさないための挑戦を続けている。



