米国では、コーヒー好きの間でもカフェイン摂取を意識的に管理し、睡眠を優先する傾向が強まっている。午後にはデカフェ飲料を選ぶ「午後のデカフェ習慣」が広がり、関連商品の市場が拡大。健康志向の高まりやウエアラブル端末の普及が背景にある。
カフェイン管理で睡眠重視、消費者の意識変化
カナダ・モントリオールの大学で工学を教えるジェレミー・クラーク教授(40代)は、朝の不安感の原因がカフェインにあると考え、コーヒーを1杯に減らし、紅茶、緑茶へと移行。現在はチコリ根のラテや低カフェインのほうじ茶ラテを楽しみ、不安感は軽減したという。「切り替えた価値はあった」と語る。
ネスレUSAでコーヒー・飲料部門を率いるダニエル・ジュング氏は、「消費者の間では飲料を通じてカフェインを管理しようとする意識が高まっている」と指摘。朝はコーヒーを飲み、午後は摂取を抑える行動が一例だ。メイヨー・クリニックによれば、8オンス(約240ミリリットル)のコーヒー1杯には平均96ミリグラムのカフェインが含まれる。ネスレは2023年、スターバックスブランドでカフェイン半減のKカップを発売。2025年末にはカフェイン量を緑茶並みに抑えた「スターバックス・リフレッシャーズ・コンセントレート」の一般向け商品も投入した。
冷たい缶飲料へのシフトと市場データ
若い消費者を中心に、温かいコーヒーから冷たい缶飲料へのシフトが進む。エナジードリンク市場の急成長に加え、低刺激の商品も伸びている。市場調査会社スピンズによると、2026年3月22日までの52週間で、冷蔵のボトル入りカフェインレスコーヒー・茶飲料の売上高は約15%増加。一方、コーヒー豆とココアの売上高は約10%減少した。ニールセンIQによれば、5月9日までの52週間では、カフェインフリー炭酸飲料の売上高は4.1%増、デカフェ表示商品は約37%伸びた。
飲酒の代替としてのデカフェ
アルコール離れが進む中、夜に楽しめるノンアルコール飲料への需要が高まっている。メリーランド州在住のコミュニケーションストラテジスト、マイケル・リッチ氏(45)は、四旬節を機にカフェイン摂取を減らし、平日夜の飲酒を控えることに。朝のコーヒーは続ける一方、エナジードリンクをやめ、無糖・無カフェインの「コカ・コーラゼロゼロ」を愛飲する。「カフェインの影響を気にせず甘さを楽しめる。郊外暮らしの夜の1杯にぴったり」と話す。コカ・コーラの調査では、欧州成人の約60%が夜間のカフェイン摂取を気にしている。
成分表示への関心と自家製デカフェ
健康志向の高まりで、消費者は原材料表示を厳しく確認。合成着色料や添加糖、加工食品を避け、カフェイン摂取を減らす動きも。南フロリダのライフスタイル・ウェルネス系コンテンツ制作者、ティファニー・エンリケス氏(27)は、溶連菌感染症を機にコーヒーをやめ、アイス抹茶ラテに切り替え。「抹茶は飲まなくても問題ない。カフェインを控えるというより、朝の習慣としてウェルネス要素を取り入れた」と語る。ペンシルベニア州マルバーンのアドリアナ・ギンドレスペルガー氏(38)は妊娠中にデカフェコーヒーで不安感が軽減した経験から、通常のコーヒーに戻さず、夫と共に缶入りデカフェ・コールドブリュー「ロウキー・コーヒー」を立ち上げた。
ウエアラブル端末がもたらす気づき
Apple WatchやOura Ringなどのウエアラブル端末により、生活習慣が睡眠に与える影響を追跡可能に。カフェイン摂取量の記録もできる。ポルトガル在住で健康長寿コーチのレイキーシャ・アレン氏(39)は、Oura Ringの着用でカフェインが深い睡眠を妨げていると気づいた。「午後は決まってだるさを感じ、気持ちが落ち着かなかった」と振り返る。午後のカフェインをやめ、朝に少量の抹茶を飲むようになった結果、深い睡眠が増え、日中の活力も向上したという。
適度なカフェインを売りにした新商品
完全な断カフェインではなく、摂取量を減らしたい消費者向けに、適度な覚醒効果を謳う新商品が相次ぐ。ペプシコは4月、茶葉由来のアミノ酸L-テアニンと紅茶由来のカフェイン69ミリグラムを含む炭酸アイスティー「ピュアリーフ・メンタルフォーカス」を発売。米飲料ブランドのリキッド・デスが新たに発売したエナジードリンクは、カフェイン含有量100ミリグラムとコーヒー1杯並みだが、「レイン トータル ボディ フューエル」など他製品の約3分の1に抑えた。同社CEOマイク・セサリオ氏は「このカテゴリーはカフェイン偏重だった。当社はエナジードリンク業界のライトビールのような存在」と話す。オレゴン州ポートランドの臨時教員ニック・バーガンタイン氏(34)は、強い不安感を経験し、カフェイン量の多いエナジードリンクから少量のものへ切り替えた。
多様化するカフェイン摂取手段
カフェインの摂取方法は飲料だけではない。近年はグミ、キャンディー、ミントタブレット、ガムなど多様な商品が登場。1回分当たりのカフェイン量を明示しており、例えばエスプレッソ風味キャンディー「アラート・ポップ」には35ミリグラムが含まれる。カフェインをやめる選択は、経験のない人には理解されにくいことも。テキサス州オースティンのスピーチライター、ジャック・リーブス氏(37)は、アルコールを控えた時は気にされなかったが、朝のコーヒーを骨だしスープに替えたところ友人に驚かれたという。「コーヒーをやめたと言うと、水を飲むのをやめたかのように驚かれ、みんなが『どうして?』と聞いてきた」と話した。



