鳥羽水族館(三重県鳥羽市)の学芸員・森滝丈也さん(56)が、変わった生物の生態をまとめた初の著書「海のへんな生きものと暮らす僕」(四六判、208ページ、税込み1980円)を6月に出版した。同館で「へんな生きもの研究所」と名付けられたコーナーを担当し、これまでに約40種の新種を発見している。
「へんな生きもの研究所」とは
鳥羽水族館は国内で唯一ラッコとジュゴンを展示し、飼育する生物は国内最多の約1200種に上る。その一角にある「へんな生きもの研究所」は、カガミモチウニやテンプライソギンチャクなど、変わった生物ばかりを展示しているコーナーだ。森滝さんは「夜な夜な眺めることが僕にとって至福の時間だ」と語る。
絶食のダイオウグソクムシが話題に
へんな生きものが最初に脚光を浴びたのは、巨大なダンゴムシの仲間「ダイオウグソクムシ」だった。2009年1月から餌を食べなくなった個体について、2011年10月に同館のブログ「飼育日記」で紹介。地元のネット紙「伊勢志摩経済新聞」が取り上げるとマスコミの取材が殺到し、「水族館のサーバーがダウンするほどだった」という。この個体は5年余り絶食を続けて絶命するまで、担当者として報道対応に追われた。
新種ハンターとしての活動
2013年7月に「へんな生きもの研究所」がオープンしてからは、年6、7回のペースで紀北町の底引き網漁船に乗り、水深300メートル前後の熊野灘の深海に潜む生物を採集。これまでに発見した新種は約40種で、自身の名前が学名になった生物が2種あり、「新種ハンター」とも呼ばれている。
8月1日には、天皇、皇后両陛下の長女愛子さまが研究所を見学され、森滝さんがカガミモチウニについて説明した。この生物は2013年12月から展示されているが和名がなく、観察を続けるうちに雌の上に雄が鏡餅のように重なり合うことが判明。2020年4月にカガミモチウニという和名を提唱し、全国の水族館でも和名で展示されるようになった。
「飼育日記」の集大成として
「飼育日記」に掲載した話題は2850回を超え、2024年秋に執筆の打診を受けた森滝さんは「飼育日記の集大成」として依頼を引き受けた。「本を読んだ若い人たちには、『好き』を追いかけることがどれほど自分を豊かにしてくれるかを感じてもらいたい」と話す。
著書は鳥羽水族館のプラザショップや全国の主な書店で販売中。同館では2007年から計37個体のダイオウグソクムシを飼育してきたが、今年7月9日に最後の1個体が死んだため、現在は生体を展示していない。



