日本初の2階建て3Dプリンター住宅が誕生した。モルタル3Dプリンターによる2階建て住宅として国内初の事例で、造形自体はわずか10日間で完了。建築確認の取得や完了検査を経て、販売にまで至った(オノコム調べ/2025年11月時点)。
建築基準法の壁をどう突破したか
プロジェクトでは、国内の建築基準に合わせて3Dモデルを用いた構造検討を実施。現場では基礎から2階までを一体印刷し、そのモルタルの壁を型枠として活用することで、頑丈なRC造(鉄筋コンクリート造)として完成させた。しかし、日本の現行法では材料がモルタルだけの建物は構造として許可されないため、壁の一部に鉄筋コンクリートと断熱材を入れる作業が必要だった。この追加作業や安全性の確認・検証を含め、全工程の工期は約半年かかった。
20社の技術者が結集
プロジェクトには、海外製の大型建築用3Dプリンターを購入し施工・オペレーションを担った「築(KIZUKI)」をはじめ、設計・監理・施工の「オノコム」、構造設計・監理の「構造計画研究所」など、国内外から20社の技術者が参画した。前例のない挑戦を成功に導いたのは、最先端のテクノロジーだけでなく、関わった人々の強い意志と、会社の垣根を越えた協力体制だった。
IT出身の女性起業家が火付け役
プロジェクトの火付け役は、築(KIZUKI)代表取締役の五十嵐理香さん。IT系システム会社の経営者としてデジタル技術の経験を持つ五十嵐さんは、「誰もやっていないから、やってみたい」と直感し、新事業を始めた。2021年に父が死去したことを機に、建設仮設住宅のリース事業を承継する代わりに、建設用大型3Dプリンターに着目。フォークリフトや4トンクレーン、高所作業車、第二種電気工事士などの資格を取得し、覚悟を決めた。2022年にCOBOD社の大型ガントリー型プリンターを購入し、四角い壁に囲まれた家を印刷する練習を重ねていた。
運命的な出会いがプロジェクトを加速
五十嵐さんは、インドネシアで機械視察中にオノコムの那須貴寛さんと出会い、さらにリース会社の会長の紹介で宮城県栗原市で多事業を展開する大場一豊さんと知り合った。初対面で「3Dプリンターで家を建てたい」という思いが一致し、プロジェクトが本格化した。



