米Neuralink社は5月25日、脳に埋め込むインプラントチップの臨床試験について、米食品医薬品局(FDA)の承認を取得したと発表した。同社の初のヒト試験は、四肢麻痺患者を対象として実施される予定だ。
臨床試験の詳細と目的
Neuralinkによると、臨床試験では、脳の運動野に極細の電極を埋め込み、思考によってコンピューターやスマートフォンなどの外部機器を操作できるかどうかを検証する。具体的には、四肢麻痺患者がカーソルを動かしたり、キーボードを操作したりする能力を評価するという。
同社はこれまで、サルやブタなどの動物実験で成果を上げてきた。2021年には、サルが脳に埋め込んだチップでコンピューターゲームをプレイする様子を公開している。
FDA承認の意義と今後の展望
FDAの承認は、Neuralinkにとって大きな前進だ。同社は2022年初めにもFDAに承認申請を行っていたが、安全性上の懸念から却下されていた。今回の承認により、ヒトでの臨床試験が可能となった。
ただし、臨床試験の開始時期や具体的な患者数などは明らかにされていない。Neuralinkは「まだ参加者の募集は行っていない」としている。
脳インプラント技術は、パーキンソン病やてんかんなどの神経疾患の治療に役立つ可能性がある。一方で、倫理的な問題やプライバシーの懸念も指摘されており、今後の議論が必要だ。
競合他社の状況
Neuralink以外にも、脳インプラント技術を開発する企業は複数存在する。例えば、米Synchron社は2021年にFDAの承認を得て、すでにヒト試験を開始している。同社のデバイスは、脳の血管内に挿入するタイプで、侵襲性が低いとされる。
また、米Blackrock Neurotech社も、四肢麻痺患者に脳インプラントを埋め込み、思考でコンピューターを操作する研究を進めている。
Neuralinkのイーロン・マスクCEOは、長期的には脳インプラントによって人間の知能を拡張し、人工知能との共生を目指すと述べている。ただし、その目標の実現にはまだ長い時間が必要とみられる。



