半導体を巡る米中対立が激化し、日本を含む各国が自国生産強化に乗り出している。地政学リスクがサプライチェーンを揺るがす中、日本の戦略が注目されている。
半導体を巡る米中の攻防
米国のバイデン政権は、中国への半導体輸出規制を強化している。2022年10月には、先端半導体や製造装置の対中国輸出を厳しく制限する新ルールを発表した。これに対し、中国は自国での半導体開発を加速させ、2025年までに半導体の自給率を70%に引き上げる目標を掲げている。
こうした動きは、世界の半導体サプライチェーンに大きな影響を与えている。台湾のTSMCや韓国のサムスン電子といった主要メーカーは、米国に新工場を建設するなど、生産拠点の分散化を進めている。
日本の半導体産業の現状
日本はかつて半導体大国だったが、現在は世界シェアで10%を切っている。しかし、政府は半導体の安定供給の重要性を認識し、2021年には半導体・デジタル産業戦略を策定。2022年には、TSMCの熊本工場建設に対して最大4760億円の補助金を決定した。
また、経済産業省は2023年5月、半導体の設計・製造を手掛けるラピダス社に対し、最大3300億円の支援を行うと発表した。ラピダスは、2027年までの2ナノメートル世代の半導体量産を目指している。
地政学リスクとサプライチェーンの課題
半導体のサプライチェーンは、台湾や韓国に依存している。台湾は世界の半導体の約6割を生産しており、そのほとんどがTSMCによるものだ。もし台湾海峡で紛争が発生すれば、世界の半導体供給は大きな打撃を受ける。
このリスクを軽減するため、各国は自国生産の強化を進めている。米国はCHIPS法に基づき、半導体産業に527億ドルの補助金を投入。欧州連合(EU)も、欧州半導体法で430億ユーロの投資を計画している。
日本の戦略のポイント
日本の戦略の柱は、先端半導体の国内生産と、サプライチェーンの強靭化だ。ラピダスへの支援は、先端半導体の国産化を目指すもの。また、TSMCの熊本工場は、車載用半導体など需要の高い分野をカバーする。
さらに、日本は米国やオランダなどと連携し、半導体製造装置の輸出管理を強化している。2023年には、23品目の半導体製造装置を輸出規制の対象に加えた。
しかし、専門家からは「日本が半導体で再び世界をリードするのは難しい」との声も聞かれる。必要なのは、巨額の投資と長期的な視野に立った戦略だ。
今後の展望
半導体を巡る地政学リスクは、今後も高まり続けると予想される。米中の対立は、先端半導体の分野でさらに激化する可能性がある。日本にとっては、技術の優位性を維持しつつ、外交・安全保障面でのバランスを取ることが求められる。
半導体は、デジタル社会の基盤であり、経済安全保障の要でもある。日本の選択が、今後の世界の半導体市場に大きな影響を与えることは間違いない。



