1万円超えのビニール傘が存在する理由
ビニール傘といえば、コンビニで500円ほどで買える安価な雨具というイメージが強い。しかし、老舗傘メーカーが手掛ける一本は、なんと1万7600円という価格設定でありながら、皇室や政治家、芸能人など幅広い層に愛用されている。この高級透明傘「ホワイトローズ」は、単なる雨具ではなく、職人の技が光る“作品”として注目を集めている。
純国産にこだわる老舗の哲学
同社の須藤社長は、中央大学法学部と工学院大学専門学校機械科を卒業後、スポーツ用品メーカーSSKに入社。アメリカ支社の立ち上げに携わった後、父に懇願されて家業を継いだ。彼は「当社の傘を1本仕上げるためには、骨、手元、ビニール素材、細かい金具に至るまで、多くの国内部品企業や職人が関わっている。純国産にこだわるからこそ、その人たちと共存共栄していきたい」と語る。この姿勢が、価格の高さにつながっている。
修理で「一生もの」に
同社は積極的に修理を受け付けており、長い傘は2000円、折りたたみ傘は4000円(各送料1100円別)でビニールの張り替えに対応。手間を考えれば赤字同然の価格だが、顧客に「一生もの」として使ってほしいという思いからだ。取材中も、カナダ人や日本人が入れ替わり訪れ、商品説明を聞きながら購入していったという。
伝統工芸「江戸切子」のような存在へ
須藤氏は、伝統工芸「江戸切子」を例に挙げ、「雨の日にお気に入りの服を着て歩くとき、大切な人と会うときには、『ホワイトローズの透明な傘で出かけたい』と言っていただきたい。お酒を飲むときに愛される江戸切子のように、人の愛着とともに生きる作品として、次の世代へつなげていきたい」と展望を語る。最近は「放射冷却素材」を使用した晴雨兼用日傘も販売しており、商品開発にも積極的だ。
300年企業が活路を見出した高級傘の未来
300年の歴史を持つ老舗企業が、あえて「ワケあって高い」戦略で活路を見出したこの傘は、単なる雨具を超え、使う人の愛着を背負う存在となっている。高級ビニール傘というニッチ市場で、職人の技術と雇用を守りながら、新たな価値を創造し続けている。



