ビニール傘でありながら1万円を超える高級品が、皇室や政治家、芸能人に愛用されている。その名は「カテール」。東京都内の老舗傘メーカー「ホワイトローズ」が手掛けるこの傘は、なぜこれほどまでに支持されているのか。開発の背景から、ネーミングの秘密、そして4歳から傘張りを手伝った社長のエピソードまで、その全貌に迫る。
「カテール」の誕生:1987年、地元議員からの依頼
「カテール」の原型が生まれたのは1987年。当時、地元の東京都議会議員から、現社長の父である創業者に「雨の日の街頭演説でも、顔がしっかり見えて、強風でも壊れない頑丈な傘を作ってほしい」という相談が持ち込まれた。これが開発のきっかけだ。
当時のビニール傘はサイズが小さく、強風でひっくり返ると壊れてしまう商品が大半だった。ビニール傘の素材である塩化ビニールは引っ張り強度に優れているが、骨組みが弱いと素材の力に骨が負けて傘は一瞬で崩壊してしまう。そこで同社は、航空機の窓ガラスなどにも使われる強靭かつしなやかな「グラスファイバー」製の骨を特注で採用した。
ネーミング戦略:SEO対策で「選挙に勝てる」傘に
2008年、この傘に「カテール」という名前が付けられ、商標を取得。名前には「選挙に勝てる」という意味が込められている。縁起の良いネーミングと抜群の機能性から口コミで広がり、現在では与野党を問わず多くの政治家が選挙戦で使用するようになった。
ホワイトローズの須藤社長は、ネーミングの背景について次のように語る。「普通の傘メーカーは商品を型番(アルファベットと数字の組み合わせ)で表すことが多いが、うちはあえて全部に固有の名前を付けている。ネーミングをつけた当時はインターネットの普及期で、SEO対策が話題になっていた。当社の商品を扱ってくれる『心斎橋みや竹』(大阪市)の宮武和広さんのアドバイスもあり、例えばお客さまが『カテール、傘』と検索したときに当社のページが上位に上がるためのデジタル戦略として固有の名前をつけたのだ」
製品ラインナップ:9900円の「カテール70PRO」
現在の主力製品の一つが「カテール70PRO」(税込み9900円)。70センチの親骨を持ち、実行直径は約114センチ。大きなサイズで、顔をしっかり覆いながらも強風に耐える設計となっている。さらに高級ラインとして、1万7600円のモデルも存在し、皇室や芸能人も愛用している。
社長の幼少期:4歳から傘張りを手伝う
須藤社長は、ビニール傘の開発当時は幼児だった。父が作業していた思い出について、「思い出というか、私は4歳のときから実際に“傘張り”をやっていました(笑)。傘のビニールカバーが出来上がると、それを自宅に持ち帰る。夜になると、父と母と私で――4歳なので手伝い程度ですが――ビニールのカバーを骨に貼る作業を積極的に行いました。ですから、幼いながらも『ビニール傘』の認識ははっきりと持っていましたね」と振り返る。
日本人の傘好きな国民性と高級傘の未来
ホワイトローズは、高級ビニール傘というニッチな市場で確固たる地位を築いている。その背景には、日本人の「傘が好きな国民性」があると須藤社長は分析する。今後も、機能性とネーミングにこだわった製品開発を続けていく方針だ。



