スーパーで見かける紫色テープ「たばねら」、シェア7割の秘密と日本独自の発明
紫色テープ「たばねら」シェア7割の秘密と日本独自の発明

日本のスーパーで野菜を束ねる紫色のテープをご存じだろうか。包丁で切らなければ取れないほど頑丈でありながら、野菜には全くくっつかない不思議なテープ。その名は「たばねら」、発売から約50年が経過した今もなお、国内シェア7割を誇るロングセラー商品である。しかも、海外のスーパーでは見られない日本独自の発明だという。なぜこんな発明が生まれたのか。その秘密を探るため、ニチバン本社を訪ねた。

紫色テープの正体とその秘密

料理中、野菜に巻かれた紫色のテープを包丁で切る習慣に気づいたことはないだろうか。手で引き剥がそうとしても頑丈でなかなか取れない。しかし、テープの糊が野菜に残ったことは一度もない。このテープは「たばねら」という商品で、生み出したのは「セロテープ」で有名なニチバン。発売は1978年。コロナ禍と食品衛生法改正という二度の危機を乗り越え、今なお野菜結束テープ市場で圧倒的なシェアを誇る。

話を聞かせてくれたのは、事業戦略本部の平山繁明氏。マーケティングから製品開発まで「たばねら」全体を統括する人物である。ニチバンは1918年創業、2026年3月期の売上高は504億7000万円。粘着テープを主力とする老舗メーカーで、「たばねら」はその製品群の中ではニッチな存在だ。

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「貼る」ではなく「束ねる」という発想

「たばねら」登場前、農家やスーパーでニラやほうれん草を束ねる作業はすべて手作業だった。紐や輪ゴムを使い、一本一本縛っていく地味で時間のかかる工程。そこに「たばねら」が登場した。専用の結束機にセットし、レバーを操作するとテープが一瞬で野菜を巻き留める。手作業とは比較にならない速さで束ができ上がる。

「テープという形態で『物を結束する』という用途を、『たばねら』が初めて提案したんです」と平山氏は語る。テープといえば貼る、封をする、固定するもの。それを「束ねる」道具として位置づけ直したところに、この製品の発明性がある。生産現場で評価され、瞬く間に全国へと広がった。

なぜ野菜にくっつかないのか

「たばねら」の最大の特徴は、強力に束ねるのに野菜の表面にはくっつかないこと。これは「自着テープ」と呼ばれる技術によるもので、テープ同士は強く接着するが、野菜などの被着体には付着しない。糊の配合やテープの素材を調整することで実現している。この技術は、ニチバンが長年培ってきた粘着技術の結晶である。

誕生の背景:GHQの郵便検閲から始まった

「たばねら」の開発の原点は、意外なところにある。第二次世界大戦後、GHQによる郵便検閲が行われていた際、封筒を開封した跡が分からないようにする「剥がせる糊」の需要があった。ニチバンはこの要望に応え、後に「たばねら」の自着技術へと発展する技術を開発した。その後、野菜束ね用のテープとして応用され、1978年に商品化された。

「剥がれないテープ」との悪戦苦闘

開発当時、課題となったのは「剥がれないテープ」の実現。野菜を束ねるテープは、輸送中や店頭でほどけてはいけない。しかし、強力すぎると野菜を傷つける。この相反する要求を満たすため、試行錯誤が続けられた。最終的に、テープの粘着力と弾力性を最適化し、専用の結束機と組み合わせることで、ほどけずに野菜を傷つけない結束を実現した。

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紫テープが直面した2度の危機

「たばねら」は二度の大きな危機を乗り越えている。一度目はコロナ禍。外食需要の減少で野菜の出荷量が減り、テープの需要も落ち込んだ。二度目は食品衛生法の改正。直接野菜に触れるテープとして、新たな基準をクリアする必要が生じた。しかし、ニチバンは迅速に対応。素材や製造工程を見直し、基準を満たす製品を開発。逆に、この危機を乗り越えたことで信頼を高め、シェアを拡大した。

逆風が吹くほど強くなった

「たばねら」は逆境に強かった。コロナ禍では、家庭での調理需要が増え、スーパーでの小分け包装の需要が拡大。食品衛生法改正では、他社が追随できない中で、いち早く対応したことで差別化に成功。逆風をチャンスに変え、市場での地位を確固たるものにした。

「自着テープで野菜を束ねる」は日本独自

海外のスーパーでは、野菜を束ねるのに輪ゴムや結束バンド、あるいはプラスチックのクリップが使われることが多い。自着テープで野菜を束ねる方法は、日本独自の文化と言える。その理由として、日本の農家やスーパーの効率化へのこだわり、そしてニチバンの技術力が挙げられる。また、消費者がテープの糊を気にしないという日本の食文化も背景にある。

あえて用途を細かく分けたことで生き残れた

「たばねら」は、あえて用途を細かく分けた製品展開を行っている。ニラ用、ほうれん草用、小松菜用など、野菜の種類や束の太さに合わせたテープ幅や強度を用意。これにより、それぞれの野菜に最適な結束が可能となり、農家やスーパーから高い支持を得ている。ニッチ市場に特化することで、大手メーカーの参入を防ぎ、ロングセラー商品として生き残ることができた。

ニチバンの「たばねら」は、単なる結束テープではなく、日本の農業や流通の効率化に貢献してきた存在である。その小さな紫色のテープには、50年にわたる技術の蓄積と、現場の声を反映した工夫が詰まっている。次にスーパーで紫色のテープを見かけたら、その背景にある物語に思いを馳せてみてはいかがだろうか。