東洋経済オンラインの有料会員向けリアルイベント「TK-HUB」第3回が2026年5月29日に開催され、テーマは「全国のショッピングモールを訪れまくる2人が未来を語る すごいモール やばいモール」でした。ショッピングセンター研究家の坪川うた氏と都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家の谷頭和希氏が登壇し、東洋経済オンライン副編集長・岡本拓の進行で約2時間にわたる対談が行われました。
「やばいモール」を生む、7つの共通項
対談は「そもそもモールとは?」という定義の確認から始まりました。坪川氏によると、モールは元々「(木陰のある)散歩道・遊歩道」を意味し、現在の日本ではイオンモールやららぽーとに代表されるショッピングセンターとほぼ同義で使われています。プライベートで500以上の商業施設を巡ってきた坪川氏は、郊外型広域ショッピングセンター第1号を1969年開業の玉川高島屋S・C(東京・二子玉川)と位置付け、この年を「ショッピングセンター元年」としています。
その後、現在の形態のショッピングモールが大量に生まれる転機は2000年6月。大規模小売店舗法の廃止と大規模小売店舗立地法(大店立地法)の施行により、巨大施設の出店規制が緩和され、2000年代に建設ラッシュが起こりました。近接した立地に巨大モールが乱立した結果、テナントがほとんど入らない「廃墟モール」が各地に発生する端緒となりました。
「明るい廃墟」はなぜ生まれたのか
坪川氏は「やばいモール」に共通する7つの特徴を挙げました。その一つが「明るい廃墟」現象です。これは、建物は新しいが空き区画が目立つモールを指します。原因として、過剰な供給と需要のミスマッチが挙げられます。特に、大店立地法後の規制緩和で、人口に見合わない規模のモールが次々と建設されたことが背景にあります。
谷頭氏は、チェーンストアの視点から「やばいモール」の特徴を分析。テナントミックスが不適切で、集客力の高い核店舗が不足している場合、モール全体の魅力が低下すると指摘しました。また、駐車場の利便性やアクセスの悪さも要因の一つです。
アクアラインが「街ごと空洞化」をもたらした
具体的な事例として、東京湾アクアラインの開通がもたらした影響が議論されました。アクアラインによって千葉県木更津市へのアクセスが向上した一方で、既存の商店街や小規模商業施設が衰退し、「街ごと空洞化」を引き起こしたと坪川氏は指摘。モールの立地が周辺地域に与える影響は大きく、単なる商業施設の成功・失敗にとどまらないと述べました。
谷頭氏もこれに同意し、モール開発が地域経済に与える波及効果を考慮する必要性を強調。特に、大型モールが地域の雇用を奪い、小規模店舗を駆逐する負の側面があると指摘しました。
「すごいモール」は1日にして成らず
一方で、多くの人で賑わう「すごいモール」の条件についても議論が行われました。坪川氏は、成功しているモールの共通点として、地域のニーズを的確に捉えたテナント構成、定期的なリニューアル、コミュニティスペースの充実などを挙げました。特に、単なる買い物の場ではなく、体験や交流の場としての機能が重要だと述べています。
谷頭氏は、チェーンストアの視点から、核店舗の強さとテナントバランスの重要性を指摘。例えば、食品スーパーが強いモールは日常的な集客が見込める一方、ファッション専門店ばかりでは来店頻度が低下すると分析しました。
「やばい」で終わらせない、未来志向の議論を
対談の後半では、モールの未来について議論が展開されました。坪川氏は、空き区画を活用した新たなビジネスモデルや、地域住民との協働による活性化策を提案。谷頭氏は、オンラインとオフラインの融合(O2O)や、データ活用によるパーソナライズドなサービスの重要性を強調しました。
両氏とも、単に「やばいモール」を批判するのではなく、持続可能なモール経営のための具体的な方策を議論することの重要性を訴えました。特に、地域資源を活用した差別化や、環境配慮型の取り組みが今後の鍵になるとの見解で一致しました。
読者の問いが引き出す、モールの未来
イベントでは参加者からの質問も活発に寄せられました。例えば、「地方の小さなモールが生き残るにはどうすればいいか」という質問に対し、坪川氏は「地域のハブ機能として、医療や行政サービスも併設する複合施設化が有効」と回答。谷頭氏は「地元の特産品を活かしたテナント誘致や、イベント開催による集客が重要」と付け加えました。
また、オンラインショッピングの台頭に対するモールの役割について、両氏は「リアルな体験価値」の重要性を強調。試着や実物確認ができる場としての価値は依然として高く、むしろデジタルと連携することで新たな顧客体験を創出できると述べました。
本イベントの模様は、動画版も有料会員限定で公開されています。



