日本初の2階建て3Dプリンター住宅「ステルスハウス」が宮城県栗原市に完成した。造形時間はわずか10日で、前例のない構造計算や法律の壁を乗り越えて実現した。設計から施工まで、多くの困難を克服し、2025年3月11日の起業家万博では総務大臣賞を受賞した。
プロジェクトの始まりと協力体制
プロジェクトを主導したのは、五十嵐さん。彼女はオノコムADC推進室の那須貴寛さんと意気投合し、2024年に設計を開始。那須さんは「一緒にやりたいです」とオファーし、快諾された。確認申請は異例の3カ月で許可された。
しかし、申請が下りて2カ月後、当初依頼していた施工業者から「できない」と断られた。基礎の鉄筋を含む全体監理が可能な建設会社は少なく、急きょオノコムに施工を依頼した。
支援と困難
ピンチを救ったのは、宮城県栗原市でクリハラ生コン代表取締役社長を務める大場一豊さん。彼は「栗原市で建てるなら応援するよ」と土地と建築費の支援を即決した。五十嵐さんは「お二人にたまたま出会わなかったら、実現できなかった」と振り返る。
しかし、着工後も多くの困難が待ち受けていた。氷点下の真冬にはモルタルが固まらず垂れ、猛暑の夏にはホース内で固まった。図面の修正も何度か必要で、予算もオーバーした。五十嵐さんは「毎日ドキドキして、トラブルが起きないように祈っていた」と語る。それでもスケジュールに大幅な遅れはなく、印刷が予定通り終わった瞬間は安堵感に包まれた。
技術的特徴と今後の展望
「ステルスハウス」は、天井にシート状の幕素材を使った幕天井を採用。軽量で地震時の落下リスクを軽減する。五十嵐さんは起業家万博で東北代表として最優秀賞の総務大臣賞を受賞。東北代表の受賞は8年ぶりで、女性の受賞も珍しい。
五十嵐さんは「今回は特殊なモデルだが、自治体と連携し量産化を進め、コスト削減と効率化を目指す。技術者育成のアカデミー事業も準備中。協力会社にはビジネスとして還元したい」と語る。
オノコムの役割
オノコムは愛知県豊橋市で創業し、東京に本社を置く約90年の歴史を持つゼネコン。スローガンは「なければつくる」。那須さんは「他社が真似できないデザインを最初にやろう」と語り、技術の挑戦を束ねた。



