AIインフラ拡大で電力需要急増…「ワットビット連携」が鍵に? さくら田中社長と東電が対談:Interop Tokyo 2026
AI電力不足に「ワットビット連携」が鍵? さくら田中社長と東電対談

AI(人工知能)インフラの拡大に伴い、データセンターの電力需要が急増している。この課題に対し、電力と情報通信を融合させる「ワットビット連携」の概念が注目を集めている。6月10日から12日まで幕張メッセで開催された「Interop Tokyo 2026」の基調講演では、東京電力ホールディングスの上野宏(常務フェロー)氏と、さくらインターネットの田中邦裕代表取締役社長が、この新たな可能性について議論を交わした。

ワットビット連携とは

セッションのテーマは「ワットビット連携」。電力(ワット)と情報通信(ビット)の連携にとどまらず、熱や情報の地産地消を広げる構想だ。上野氏が提唱するこの考え方では、送電網と通信網、データセンターの整備を一体で計画する。整備に時間と費用がかかる送電線を増強する代わりに、電力に余裕がある地域へデータセンターを誘致し、光ファイバーでデータを「運搬」する。さらに、廃熱を現地で利活用し、日本全体でエネルギー需給の最適化を目指す。

この構想は国の政策としても議論が進んでおり、2025年3月には総務省と経済産業省が「ワット・ビット連携官民協議会」を設置した。

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具体例:北海道の余剰電力をデータで運ぶ

例えば北海道では、太陽光発電の電力が余っているが、東京に送るには大規模な送電設備が必要となる。それならば現地にデータセンターを置き、農業ハウスや酪農、漁業といった一次産業をAIで自動化する。AIを動かすデータセンターの廃熱は温水として利活用する。こうすれば、送電網を増強して東京へ電力を運ぶ必要はなくなるという発想だ。

熱問題の解決策:廃熱を資源に

現在データセンターでは、機器の高発熱化による廃熱処理も問題化している。上野氏は「(単に)冷やすのをやめればいいのでは。出てきた熱をありがたく使えばいい」と語る。人体も考えた結果は熱になり、血管やリンパが全身に熱を回して恒常性を保っている。人体に倣い、エネルギーの地産地消に加えてデータの地産地消、熱の地産地消までを叶えたものがワットビット連携の到達点になるというのが上野氏の主張だ。

実際に東電では、熱を再利用する技術の開発も進めている。東京電力の研究所では、蒸気がポンプなどの外部動力なしに熱そのものを駆動力として振動する「自励振動」という現象を利用し、チップの温度上昇を抑える研究を進めている。副産物として使い勝手のいい温度の熱水が得られ、暖房にも冷房にも転用できるという。

さくら田中社長「構想ではなく実現段階」

田中社長は、ワットビット連携は「もう構想ではなく実現段階」と語る。根拠として挙げたのが自社の石狩データセンターだ。さくらインターネットは創業時、都市型データセンターの会社だったが、都市部の地価高騰と電力確保の難しさから、電力のある場所にデータセンターを置く方向へ転換した。

熱問題については、冬での冷房は全く足りず外気冷房に落ち着いたが、廃熱はロードヒーティング(道路の融雪)や暖房に活用。結果として暖房費はほとんどかかっていないという。かつては廃熱でマンゴー栽培も試みた。

同様の取り組みを全国に広げる鍵として田中社長が挙げたのが、電気を運ぶ社会からデータを運ぶ社会への転換だ。北海道ではピーク時に4GWの電力が余る。うち1.5GW程度は本州で活用も可能と見込まれているが、その大半は使われずに捨てられている。本州へ送るための送電線の新設には5~10年単位の時間と数千億円から数兆円規模の費用がかかってしまうからだ。

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一方、光ファイバーなら数千億円規模で、2~3年で敷設できると田中社長。電気を運ぶ能力は技術革新で10倍にはならないが、通信速度はこの15年で100~1000倍になった。それなら電気を消費地へ運ぶのではなく、電力が余る場所にデータセンターを置き、データを運べばいい。ただしデータセンター同士の連携のため「集積は極めて重要」であり、需要地から離れても拠点自体は1カ所に集めるべきだとした。

産業構造の変化と競争力

産業構造の変化も、この転換を後押ししているという。AI需要の急拡大により、かつては発注側だったIT業界は、ゼネコンに建設を、サーバー会社に販売を委ねる側に回った。これにより、電力や設備を確保できるかどうかが事業を左右する時代に変わった。つまり、電力を押さえられる立地そのものに競争力としての需要が生まれていると語る。

ただし、日米ではデータセンターの建設を巡る反対運動も起きており、地方への立地には地域の理解が欠かせない。田中社長は、収益以上のベネフィットとして、防災拠点としての役割を挙げる。18年の北海道胆振東部地震の際には、水も電気も通信もある同社のデータセンターに社員が3日間避難した実績をアピールした。

AIインフラとしてのデータセンター需要

とはいえ、AIインフラとしてのデータセンター需要は高いと両氏。上野氏は、世界でも人口減少と高齢化が早い日本では、労働力を補うAIへの反発が他国より小さいとして、「AIとの共生は日本が一番うまくやれる可能性が高い」と語る。田中社長も「AIデータセンターは全てのレイヤーでめちゃくちゃ市場性がある」とし、電気のように社会に欠かせないインフラに育つと展望した。