SBI北尾会長が目指す「完全オンチェーン市場」:不動産も含む全資産をトークン化し24時間即時決済を実現へ
SBI北尾会長が目指す完全オンチェーン市場:不動産もトークン化し即時決済へ

SBIホールディングスの北尾吉孝会長は、既存の取引所が立ち行かなくなる未来を見据え、あらゆる資産をデジタル上で安全に取引できる「完全オンチェーン市場」の創設を提唱している。7月15日、暗号資産を株式や債券と同様の枠組みで扱う改正資金決済法が成立。歴史的な制度転換の中、SBIは新たな金融の姿を打ち上げた。

SBIの完全オンチェーン構想

SBIグループは6月、暗号資産取引所bitbankを467億円で完全子会社化すると発表。子会社のSBI VCトレードと合わせた仮想通貨の預かり資産は1.1兆円超、暗号資産口座数は約292万口座となる。国内暗号資産交換業者の中で預かり資産残高で首位、口座数でもトップクラスの規模だ。

北尾会長は「全ての価値はトークン化される」と語る。目指すのは単なる暗号資産ビジネスの拡大ではない。株式や債券、預金、さらには不動産や将来の売掛金に至るまで、あらゆる資産をブロックチェーン上にデジタルデータとして安全に載せ、24時間365日、即日で売買と決済を終わらせる「新たな取引市場」の創設だ。これにより、ガバナンスと透明性を高めた「完全オンチェーン取引所」を実現する。

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私設取引システム(PTS)の拡大で得た取引所認可の利益を生かし、「24時間365日稼働」「即日決済(T+0)」「NTTグループの光通信技術『IOWN』を活用した」取引プラットフォームを日本に立ち上げようとしている。

現実資産のトークン化(RWA)市場の拡大

北尾会長は「全ての価値はトークン化される」と繰り返し述べてきた。国債や不動産を始めとした現実世界の資産をデジタル化し、ネット上でいつでも少額から取引できるようにするRWA(リアルワールドアセット)市場は、2034年までに1000倍以上に膨らむとされる。北尾会長はさらに「個人的には1万倍ぐらいになると思っている」と述べた。24時間リアルタイムで取引でき、流動性と資本効率が高まるためだ。

この動きは既に海外で始まっている。2025年6月に米Robinhoodが米国市場でトークン化した株式の取り扱いを開始。2026年1月には、ニューヨーク証券取引所の親会社であるIntercontinental Exchange(ICE)が、トークン化証券の取引とオンチェーン決済を担うプラットフォームの開発を発表した。

こうした仕組みは、自社のアセットを持つ一般企業にとっても他人事ではない。不動産やインフラなどの固定資産だけでなく、将来の売掛金や事業キャッシュフローまでをトークン化(RWA化)してオンチェーンで世界中の投資家へ販売できれば、企業は銀行借入や従来の社債発行に頼らない、迅速で多様な「新たな資金調達手段」を手に入れることになる。株式市場は世界全体で100兆ドルを超える。北尾会長は「その一部でもトークン化されてオンチェーン取引が可能になれば、資本市場に与えるインパクトは絶大」と期待する。

日本と海外の規制・税制の差

米国は、暗号資産を扱う法制度の整備を進めている。2025年7月、ステーブルコインのルールを定めたGENIUS法が成立。施行は2027年1月を見込む。米証券取引委員会(SEC)は、証券規制を見直して米国金融市場のオンチェーン化を進める「Project Crypto」を打ち出した。管轄する機関を明確にし、暗号資産の包括的な規制の枠組みを定めるクラリティ法も、上院の本会議にかかっている。

しかし、こうした制度整備を進めていても、民間の動きには追いついていない。北尾会長は「政策はいつも遅れる。先に民間のベンチャーが新しい技術を開発してやり始め、政策は後追いになる。それはそれでいいが、さらに遅らせるような政策は困る」と語る。

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背景にあるのはドルの地位だ。北尾会長は「ステーブルコインの普及がドルを基軸通貨とする体制を支える」と説明する。中国やロシア、サウジアラビアが脱ドルの動きを見せる中、ドル建てのステーブルコインが使われるほど、ドルの決済シェアは保たれるという理屈だ。

こうした世界的な動きに対し、日本も対応を進めている。2023年6月の改正資金決済法で、ステーブルコインを電子決済手段として認めた。ただし、その後の運用には制約が残る。「1回あたり100万円」という送金上限や贈与の制限があり、北尾会長は「この制約がある限り、利用は一つも増えていない」と指摘する。国内の暗号資産の口座開設数は1400万を超え、利用者の裾野が広がる一方で、制度が追いついていない実態がある。

税制も同様だ。暗号資産を売却し、現金化すると雑所得として総合課税の対象となり、最大55%の税率がかかる。2026年3月に成立した改正所得税法で、国内取引所を通じた特定暗号資産の譲渡益に一律20%の申告分離課税を適用することが決まった。ただし適用は金商法改正法の施行予定年からで、2028年1月を予定している。暗号資産を組み入れた上場投資信託(ETF)も、米国では2024年に承認されたが、日本国内では認められていない。

北尾会長はこの現状に「55%も税金をかけている国がどこにあるのか。オンチェーン金融を次世代の国家金融インフラと位置付けるのであれば、税制の見直しもETFの解禁も急ぐべきだ」と指摘した。