ひきこもりの当事者とその家族が抱える葛藤に光を当てた小説『月曜日のこない部屋』(徳間書店・2090円)を、小説家の城山真一さんが刊行した。ひきこもり支援施設のスタッフを主人公に、部屋に閉じこもる当事者だけでなく、家族の問題にも踏み込み、止まった時間を再び動かそうとする物語だ。
「8050問題」の本質を描く
内閣府が令和4年度に実施した「こども・若者の意識と生活に関する調査」によると、15~64歳の50人に1人、約146万人がひきこもり状態にあると推計されている。
「ここ数年、親が亡くなった後に50代の無職の子が遺体を放置したり、年金を詐取したりして逮捕されるニュースを目にする。だが、その経緯までは報道されない」
ひきこもりが長期化し、当事者が50代、親が80代へと高年齢化して共依存や経済的困窮に陥る「8050問題」。城山さんは、当事者や家族が抱える人生の不条理や葛藤に光を当てることで、「問題の本質が見えてくるのではないかと考え、深く掘り下げたかった」と執筆の動機を語る。支援団体にも聞き取り取材をした。
多様な視点から描く葛藤
主人公の矢島宇宙は、施設立ち上げに関わった古参スタッフ。素人が成長してハッピーエンドを迎える典型的な「お仕事小説」では、問題の重さが薄れてしまうと考え、あえてバブル崩壊直後を経験した世代としての葛藤やトラウマを背負わせ、言動に説得力を持たせた。
物語では、さまざまなケースを素人、プロの支援者、家族、当事者本人の視点から描き出す。安易な「いい話」に逃げず、多様な立場の葛藤を立体的に描こうとした。「いま現場で苦しんでいる人が、現実的な光を感じられる物語を目指した」と振り返る。
長期化する問題への処方箋
ひきこもりの問題の本質は長期化にある。2年以上になると、本人は思考を放棄しがちになり、家族も現状のバランスが崩れることを恐れ、変化を拒むようになる。固定化し、冷え切った家族関係を溶かすためには、矢島のような「第三者による『お節介』が必要だ」と指摘する。
「外の世界に自分を気にかける人がいる」と本人が気づくことで、初めて外へ出ようとするエネルギーが生まれる。「人は人によって、出会いによって立ち直ることがある」と力を込めた。



