半導体不足が続く中、自動車業界がEVシフトで直面する新たな課題
半導体不足とEVシフトが自動車業界に突きつける課題

半導体不足の影響が長引く中、自動車業界はEV(電気自動車)シフトに伴う新たな課題に直面している。車載半導体の需要が急増する一方で、供給が追いつかず、生産計画に支障をきたすケースが相次いでいる。

半導体不足の現状と自動車生産への影響

世界的な半導体不足は2020年後半から顕在化し、自動車メーカーは減産を余儀なくされてきた。2023年に入っても状況は改善しておらず、特に先端プロセスを用いた車載半導体の供給は依然として逼迫している。ある自動車部品メーカーの幹部は「需要に対して供給が3割程度不足している」と指摘する。

この影響で、トヨタ自動車は2023年度の世界生産目標を当初の970万台から950万台に下方修正した。また、日産自動車やホンダも同様に減産計画を発表している。半導体不足が長期化する背景には、パンデミック後のデジタル機器需要の急増や地政学的リスクによるサプライチェーンの混乱がある。

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EVシフトがもたらす半導体需要の急増

EVシフトは半導体需要をさらに押し上げている。従来のガソリン車に比べ、EVはパワー半導体やマイコン、センサーなど搭載半導体の数が2〜3倍に増加する。国際エネルギー機関(IEA)の報告によれば、2030年までにEV向け半導体の市場規模は現在の3倍に拡大すると見込まれている。

特に、電力制御に使われるSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)などの次世代パワー半導体の需要が高まっている。これらの材料は従来のシリコンに比べてエネルギー効率が良く、EVの航続距離延長に貢献する。しかし、製造プロセスが複雑で量産化に時間がかかるため、供給不足が深刻化している。

自動車メーカーの対応策と業界再編の可能性

こうした状況を受け、自動車メーカーは半導体の調達戦略を見直し始めている。従来のジャストインタイム方式から、在庫を積み増す方向にシフトする動きが広がっている。また、半導体メーカーとの直接契約や、自社での半導体設計・開発に乗り出す企業も出てきている。

トヨタは2023年、デンソーと共同で車載半導体の設計会社を設立した。また、フォルクスワーゲンは半導体メーカーとの戦略的提携を強化し、長期契約を結んでいる。一方、業界内では半導体不足を契機に、自動車メーカーと半導体メーカーの連携が加速しており、将来的な業界再編の可能性も指摘されている。

しかし、これらの取り組みが実を結ぶまでには時間がかかる。半導体の新工場建設には通常2〜3年を要し、投資額も数千億円規模に上る。さらに、技術者不足も深刻で、業界全体で人材の獲得競争が激化している。

今後の展望と課題

半導体不足の解消時期については、専門家の間でも見方が分かれている。楽観的な見方では2024年後半には改善するとされるが、地政学的リスクや需要の変動により、長期化する可能性も否定できない。特に、EVシフトの加速に伴い、半導体需要は今後も増加し続けると予想される。

自動車業界が持続可能な成長を遂げるためには、半導体の安定調達が不可欠だ。そのためには、サプライチェーンの多様化や在庫戦略の見直しに加え、政府の支援も重要になる。日本政府は2023年度補正予算で半導体関連の支援策を拡充しており、国内での半導体生産基盤強化を図っている。

しかし、根本的な解決には至っておらず、自動車メーカー各社は引き続き厳しい経営環境に直面している。業界全体として、半導体不足とEVシフトという二つの大きな波にどう対応していくかが、今後の競争力を左右することになるだろう。

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