日産自動車が電気自動車(EV)シフトを軸に、経営の再建を図っている。同社は2023年3月期の連結営業利益が前年比で大幅に改善したものの、依然として競合他社に比べEVのラインナップが限定的であり、市場での存在感を取り戻すことが急務となっている。
新型EV投入で巻き返しへ
日産は2026年までに新型EVを5車種投入する計画を発表。特に、2024年に発売予定のリーフの後継モデルは、航続距離の大幅な向上と急速充電対応が期待されている。また、日産は独自のバッテリー技術「e-POWER」を進化させ、EVとハイブリッドの両軸で競争力を高める方針だ。
同社の内田誠社長は「EVは当社の成長戦略の核心である。コスト競争力を高め、グローバル市場でシェアを拡大する」と述べている。
ゴーン体制後の課題
2018年のカルロス・ゴーン元会長の逮捕以降、日産は経営の混乱に直面してきた。アライアンスを組むルノーとの関係も緊張し、経営の安定化が遅れた。しかし、2023年にルノーとの資本関係を見直す新たな合意に達し、経営の自由度が増したことで、EV投資に集中できる環境が整いつつある。
アナリストからは「日産はEV分野での先行者利権を活かせなかった。リーフの成功に慢心し、競合に追い抜かれた」との指摘もある。実際、テスラや中国のBYDなどがEV市場で急成長する中、日産の世界販売台数に占めるEV比率は約5%にとどまる。
競合との差別化戦略
日産はEVの価格競争に巻き込まれるリスクを避け、独自の技術とブランド力で差別化を図る。特に、2025年から量産開始する全固体電池は、従来のリチウムイオン電池に比べエネルギー密度が高く、航続距離を2倍以上に伸ばす可能性がある。これにより、2028年までにEVのコストを現行比で30%削減する目標を掲げている。
また、日産は中国市場でのEV販売強化にも注力。中国では2026年までにEVとプラグインハイブリッド車(PHEV)を合わせて10車種以上投入する計画だ。同社のアシュワニ・グプタCOOは「中国は世界最大のEV市場であり、ここでの成功がグローバル競争の鍵を握る」と強調する。
今後の見通し
日産のEVシフトは、技術面での優位性とコスト競争力の両立が求められる。全固体電池の量産が計画通り進めば、競合に対する大きなアドバンテージとなるが、実用化にはまだ課題が多い。また、充電インフラの整備や政府の補助金政策も、EV普及のカギを握る要因だ。
日産は2023年度の世界販売目標を370万台と設定。EVシフトの成否は、同社の長期的な成長を左右する重要な試金石となる。



