なぜ組織は無駄な業務を増やし続けるのか?MIT研究が解明したメカニズム
企業や大学などの組織において、ルールの増加に伴う管理業務のコストや無駄が膨れ上がる管理業務の肥大化は深刻な問題となっている。この現象の背後にあるメカニズムを、米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが解明し、論文として発表した。
従来、こうした無駄の増加は、管理職の権力拡大欲や外部からの規制強化が原因だとされてきた。しかし本研究は、悪意のない「善意による問題解決」こそが、結果的に非効率を生み出していることを明らかにした。
善意のルールが生む悪循環
組織で何らかの問題が発生すると、再発を防ぐために新しいプロセス(規約や手順)を作成する。導入された当初、そのプロセスは確かに役立つ。しかし、時代や環境の変化とともに問題の性質が変わると、かつてのプロセスは陳腐化し、時代遅れになる。
皮肉なことに、不要になったルールは自動的に消滅することはない。誰かが時間と労力をかけて削除しない限り、確認作業や手続きの手間として、組織のエネルギーを無駄に消費し続ける。
研究チームは、このプロセス作成→陳腐化→削除というサイクルを分析し、組織の長期的な状態が2つに分かれることを発見した。1つはプロセスの数が適度なところで落ち着く持続可能な状態、もう1つはリソースの限界まで無駄が膨れ上がる制御不能な肥大化である。
肥大化の閾値を超えると手遅れに
重要なのは、ルールを作る傾向が一定のラインを超えて増やしすぎると、いくら後から削除に努めても肥大化を食い止められなくなることだ。特に現代のように環境変化が激しい時代は、ルールが陳腐化するスピードも速いため、肥大化の限界を突破するリスクが高まってしまう。だからこそ、削除を頑張る以上に、そもそもルールを作りすぎない方が根本的解決につながる。
間違った対策と真の解決策
では、すでに管理業務が肥大化しつつある組織はどう対応すべきか。シミュレーションの結果、やってはいけない失敗する対策がいくつか示されている。
例えば、ルールの新設を一時的に強く抑制し、同時に削除を一気に推進するといった短期集中型の引き締め策。あるいは、中身を確認せずにとにかくプロセスを半分に減らすといった無差別な削減。こうした対策はいずれも一時的な効果しか持たず、施策をやめればやがて元のルールだらけの状態にリバウンドしてしまう。
さらに、管理業務を後回しにして本来の仕事(生産活動)に集中するという方針も、直感に反して危険だ。目の前の仕事を優先するあまり、古いルールを見直して整理する人がいなくなり、結果として無駄なプロセスがより蓄積してしまうからだ。
真の解決策は、組織の優先順位を根本から、そして一時的ではなく恒久的に変えることにある。具体的には、2つの取り組みが車の両輪となる。1つは、ルールを作る傾向そのものを抑えること。あらゆる小さな問題に逐一ルールを設けるのをやめ、ある程度のトラブルはその都度の対応で許容する寛容さを持つことだ。
もう1つは、どのルールが今も有効で、どれがすでに役目を終えたのかを見極める力に投資し、陳腐化したものを定期的に削除する地道な努力を続けること。一時的な締め付けや、中身を問わない思い切りの削減ではなく、この2つを恒久的に組織へ組み込むことこそが、肥大化から抜け出す道だと示している。
この理論は、企業組織だけでなく、古い法律が積み重なる法体系、増え続ける規制、誰も消さない古いコードが溢れるソフトウェアなど、役目を終えた要素が溜まっていくあらゆるシステムに当てはまる可能性があるとしている。



