電気自動車(EV)への急速なシフトが、自動車部品サプライヤーに構造的な変革を強いている。従来のエンジンやトランスミッション関連部品の需要は減少の一途をたどり、各社は電動化対応部品への事業転換や、M&Aによるポートフォリオ再編を迫られている。
エンジン部品需要の減少と電動化対応の加速
日本自動車部品工業会の統計によると、2023年度の国内部品出荷額は前年比で約5%減少し、特にエンジン系部品は10%以上の落ち込みを見せた。一方で、モーターやインバーター、バッテリー関連部品は2桁の成長を記録している。このトレンドは今後も加速すると見られ、サプライヤー各社は電動化関連の投資を急ピッチで進めている。
デンソーは2030年までに電動化関連の売上高比率を現在の20%から50%に引き上げる計画を公表。同社の担当者は「エンジン部品の縮小は避けられない。電動化部品で補うだけでなく、新たな価値創出が必要だ」と述べている。
M&Aと提携による生き残り策
中小サプライヤーを中心に、M&Aや提携による生き残り策が活発化している。2024年には、国内部品メーカーの買収案件が前年比で30%増加。特に、電動化技術を持つスタートアップの買収や、異業種との提携が目立つ。
例えば、エンジンバルブ大手のA社は、モーター用磁石メーカーを買収。同社の社長は「エンジン部品だけでは将来がない。電動化の中核技術を内製化することで、顧客への提案力を高めたい」と語る。
サプライチェーンの再編と地域分散の動き
EVシフトに伴い、サプライチェーン全体の再編も進んでいる。従来のエンジン主体のサプライチェーンから、バッテリーやモーターを中心とした新たなネットワークへの移行が進行中だ。特に、中国や東南アジアでのEV生産拡大を受け、部品サプライヤーも現地生産を強化している。
経済産業省の調査によると、2030年までに国内自動車部品産業の雇用は約10%減少する可能性がある一方、電動化関連では新たに5万人の雇用が創出されると試算されている。このため、政府も中小サプライヤーの事業転換を支援する補助金制度を拡充している。
今後の展望と課題
業界関係者の間では、EVシフトの速度が予想以上に速く、対応が追いつかないサプライヤーが淘汰される可能性が指摘されている。特に、エンジン部品に特化した中小企業は、事業転換のための資金調達や人材確保が課題だ。
一方で、電動化に成功したサプライヤーは、新たな成長市場を獲得できるチャンスもある。日産自動車の調達責任者は「部品メーカーには、単なる部品供給ではなく、システム全体の最適化を提案できるパートナーとしての役割を期待している」と話す。
自動車業界の100年に一度の変革期において、部品サプライヤーの生き残りをかけた戦略が、今まさに試されている。



