EVシフト加速でガソリン車部品サプライヤーが迫られる死活的な構造転換
EVシフト加速でガソリン車部品サプライヤーが迫られる構造転換

電気自動車(EV)へのシフトが世界的に加速する中、エンジンや燃料タンク、排気系部品などガソリン車向け部品を主力としてきたサプライヤーは、事業構造の抜本的転換を迫られている。EVはガソリン車に比べて部品点数が約3分の1とされ、従来のサプライチェーンが大きく変容するからだ。

部品点数の減少がもたらす影響

ガソリン車には約3万点の部品が使われるが、EVではモーターやバッテリー、インバーターなどに集約され、部品点数は約1万点に減少する。このため、エンジンやトランスミッション、燃料系、排気系など、ガソリン車特有の部品を製造する企業は需要減少に直面する。特に、エンジン関連部品はEVでは不要となるため、これらのサプライヤーは新たな収益源の開拓が急務だ。

日本経済新聞の報道によれば、自動車部品メーカーの2023年度の連結営業利益は、EVシフトの影響で前年比で減少した企業が目立つ。例えば、エンジンバルブを手がけるリケンは、EV化の進展により主力製品の需要が減少し、業績が低迷している。同社は水素エンジン向け部品など新分野への進出を模索しているが、収益化のめどは立っていない。

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サプライヤーの再編と廃業の可能性

EVシフトは部品メーカーの再編や廃業を促す可能性が高い。業界団体の日本自動車部品工業会の調査では、会員企業の約7割がEVシフトにより事業構造の変革が必要と回答している。特に、中小部品メーカーでは、EV向け部品への転換に必要な設備投資や技術開発の負担が大きく、淘汰が進むとの見方もある。

実際、2023年には部品メーカーの買収・統合が相次いだ。例えば、エンジン部品大手の日本ピストンリングは、EV向けモーター部品の生産を強化するため、同業他社との提携を発表した。また、排気系部品を手がけるサンコーは、経営悪化により事業の一部を売却した。

生き残りをかけた新事業への挑戦

こうした中、部品メーカーは生き残りをかけて新事業への挑戦を加速している。例えば、燃料タンク大手の三桜工業は、水素タンクの開発に注力し、水素エンジン車や燃料電池車向けの部品供給を目指す。また、エンジン部品のフタバ産業は、EV用バッテリーケースの生産に乗り出し、新たな収益源を確保しようとしている。

一方、電気自動車向け部品への転換に成功した事例もある。マグネシウム合金部品を手がけるリョービは、EV用モーターハウジングの生産を拡大し、業績を伸ばしている。同社の担当者は「EVシフトは脅威だが、チャンスでもある。技術を活かせる新分野を開拓することが重要だ」と語る。

政府の支援と業界の連携

こうしたサプライヤーの構造転換を後押しするため、政府も支援策を打ち出している。経済産業省は、2023年度補正予算で、部品メーカーのEV向け生産設備投資に対する補助金を拡充した。また、自動車メーカーと部品メーカーが連携し、EV向け部品の標準化や共同開発を進める動きも出ている。

しかし、全てのサプライヤーが生き残れるわけではない。日本自動車部品工業会の試算では、現在の部品メーカーのうち、EVシフトに対応できるのは全体の3割程度にとどまるという。残りの7割は、事業転換が難しく、廃業や他社との統合を迫られる可能性がある。

地域経済への影響と雇用問題

部品メーカーの再編は、地域経済にも大きな影響を及ぼす。特に、自動車産業が地域の基幹産業となっている地方では、部品メーカーの廃業が雇用や税収に直結する。例えば、愛知県や静岡県、群馬県などでは、部品メーカーの従業員数が多く、EVシフトによる雇用喪失が懸念されている。

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群馬県の部品メーカーで働く40代の男性は「EV化が進めば、自分の仕事がなくなるかもしれない。新しい技術を学び直す必要があるが、年齢的に難しい」と不安を漏らす。こうした声に応えるため、自治体や業界団体は、再教育プログラムの提供や転職支援を強化している。

EVシフトは、自動車産業の構造を根底から変える可能性がある。ガソリン車部品サプライヤーは、この変革の波に乗り遅れることなく、早急に事業構造の転換を図る必要がある。その成否は、日本の自動車産業全体の競争力を左右する重要な鍵となるだろう。