東南アジアの電気自動車(EV)市場で、中国メーカーの存在感が急速に高まっている。2024年の東南アジア主要国における新車販売に占める中国ブランドのシェアは、前年から約2倍の18%に拡大した。一方、日本メーカーのシェアはEV分野で低迷しており、長年支配してきた東南アジア市場での地位が揺らぎ始めている。
中国EVメーカーが躍進、BYDが首位に
市場調査会社カウンターポイント・テクノロジー・マーケット・リサーチの報告によると、2024年第2四半期の東南アジアEV販売台数は前年同期比で約40%増加した。この成長を牽引したのが中国のBYDで、同社はタイ、インドネシア、ベトナムなどで販売を拡大し、地域全体のEV販売シェアでトップに立った。BYDに続くのは、同じく中国のSAIC Motor傘下のMGや、長城汽車(GWM)などだ。
日本自動車工業会のデータでは、タイ市場における日本車のシェアは2023年に約78%だったが、2024年には70%を下回る見通し。特にEV分野では日本メーカーの販売は限定的で、日産自動車の「リーフ」や三菱自動車の「eKクロスEV」などがあるものの、中国勢の低価格攻勢に対抗できていない。
日本メーカーの苦戦、EV投入の遅れが響く
東南アジアは日本メーカーにとって長年、収益の柱となってきた地域だ。トヨタ自動車、ホンダ、日産などは現地生産を拡大し、高いブランド力を誇ってきた。しかし、EVシフトへの対応の遅れが顕在化している。トヨタはタイでEV「bZ4X」を販売するものの、価格は約300万円とBYDの「ATTO 3」(約250万円)より高く、販売台数は伸び悩んでいる。
ホンダの東南アジア事業責任者は「EV市場の急成長には驚いている。当社はハイブリッド車とガソリン車の需要が継続すると見ていたが、消費者のEV志向が予想以上に強い」とコメントした。ホンダは2025年以降、東南アジア向けEVを本格投入する方針だが、中国勢に先行を許した格好だ。
タイ政府のEV振興策が市場拡大を後押し
東南アジア最大の自動車生産国であるタイでは、政府がEV購入補助金や輸入関税の引き下げなどの優遇策を打ち出し、EV需要を喚起している。タイ投資委員会(BOI)によると、2024年上半期のEV登録台数は前年同期比で2倍以上の約5万台に達した。このうち中国ブランドが約75%を占め、日本ブランドは5%未満にとどまった。
タイ政府は2030年までに新車販売の30%をEVにする目標を掲げており、中国メーカーはこうした政策を追い風に生産拠点の設置を加速している。BYDはタイに東南アジア初の工場を建設中で、2025年の稼働を目指す。長城汽車も既にタイ工場でEVを生産している。
日本メーカーの巻き返しは可能か
日本メーカーも対策を急いでいる。トヨタはタイでEV用バッテリーの現地生産を計画し、ホンダはインドネシアで2025年にEV生産を開始する予定だ。しかし、中国勢が低価格帯から高価格帯まで幅広いEVラインナップをそろえる中、日本メーカーの競争力は依然として課題が多い。
自動車アナリストの山田氏は「日本メーカーは東南アジアでのEV市場シェアを奪還するために、価格競争力だけでなく、ソフトウェアやコネクティビティなど新たな価値を提供する必要がある」と指摘する。また、現地政府との関係強化や、充電インフラ整備への協力も不可欠だ。
東南アジアのEV市場は今後も拡大が見込まれ、2025年には新車販売の10%以上をEVが占めると予測される。日本メーカーがこの流れに乗り遅れれば、長年築いてきた市場での優位性を失う可能性がある。



