電気自動車(EV)へのシフトが加速する中、自動車産業のサプライチェーンに大きな変化が起きている。エンジンやトランスミッションなど内燃機関に関連する部品の需要が減少し、これらを主力としてきた部品サプライヤーは存続の岐路に立たされている。
部品点数は3分の1に減少
EVはエンジン車に比べて部品点数が約3分の1とされ、特にパワートレイン関連の部品が大幅に削減される。例えば、エンジン、燃料タンク、排気系、冷却系などが不要となり、電動モーター、インバーター、バッテリーなどに置き換わる。この構造変化により、従来の部品サプライヤーの多くが事業存続の危機に直面している。
業界団体の調査によると、日本の自動車部品サプライヤーの約6割がEVシフトによる影響を「深刻」と回答している。特に中小規模のサプライヤーでは、EV向け部品への切り替えに必要な投資負担が重く、事業継続が困難なケースも出ている。
M&Aと事業転換が加速
こうした状況を受け、部品業界ではM&Aや事業転換の動きが活発化している。例えば、エンジンバルブを主力とするA社は、EV向けの熱管理システムに事業転換を図り、2023年には関連企業を買収した。また、燃料噴射装置を手掛けるB社は、水素関連部品に活路を見いだし、研究開発を強化している。
「生き残るためには、EVや水素など次世代技術に対応できる体制を整える必要がある。しかし、資金力や技術力の面でハードルは高い」と、業界アナリストの田中氏は指摘する。
政府の支援策も限定的
経済産業省は、サプライヤーの事業転換を支援する補助金制度を設けているが、申請手続きの煩雑さや要件の厳しさから、実際に活用できている企業は限定的だ。業界団体は、より柔軟な支援を求めている。
一方、完成車メーカーもサプライチェーンの再編を進めており、部品の共通化やモジュール化を推進。これにより、従来の系列取引の枠組みが崩れつつある。サプライヤーは、複数の完成車メーカーとの取引拡大や、他業種との連携など、新たなビジネスモデルを模索している。
地域経済への影響も懸念
部品サプライヤーの衰退は、雇用や地域経済にも影響を及ぼす。特に、自動車産業に依存する地域では、工場閉鎖や人員削減が相次ぐ可能性がある。ある地方都市では、部品メーカーの撤退により、関連従業員約500人が失職したケースも報告されている。
「EVシフトは避けられない流れだが、そのスピードと影響を考慮した対策が必要だ」と、専門家は警鐘を鳴らす。自動車産業の変革は、単なる技術革新にとどまらず、産業構造全体の再編を迫るものとなっている。



