世界的な電気自動車(EV)シフトに黄信号がともっている。主要自動車メーカー各社が、販売不振を受けて生産計画の見直しを迫られている。特に中国市場での需要減退が顕著で、一部工場ではすでに生産調整が始まった。
販売鈍化で在庫増加
業界団体のデータによると、2024年第1四半期の世界のEV販売台数は前年同期比で約10%増にとどまり、2023年の同35%増から急減速した。在庫日数も増加しており、欧州では平均在庫日数が60日を超えている。この状況を受け、複数のメーカーが生産計画を下方修正している。
ある自動車部品メーカーの幹部は「これまでの楽観的な需要予測が崩れ、各社が現実的な生産計画に修正している」と指摘する。特に中国市場では、BYDなど地元メーカーの台頭により競争が激化し、外資系メーカーのシェアが低下している。
メーカーごとの対応
ドイツのフォルクスワーゲン(VW)は、ドイツ国内のEV工場で生産調整を実施。2024年上半期のEV生産台数を当初計画から15%削減する方針だ。米国のテスラも、中国市場での販売不振を受けて上海工場の生産シフトを縮小している。
日本勢も対応を迫られている。トヨタ自動車は、EV販売目標の達成時期を2026年から2027年に延期。日産自動車は、英国の工場でEV生産ラインの稼働率を下げる検討に入った。ホンダは、米国でのEV生産開始を当初計画より半年遅らせることを決めた。
日本自動車工業会の関係者は「市場の成熟度を見極めながら、生産能力を段階的に拡大する必要がある」と話す。
需要減速の背景
EV需要の減速には複数の要因が指摘されている。まず、充電インフラの整備が遅れていること。次に、バッテリー価格の高止まりにより車両価格が依然として高いこと。さらに、各国政府の補助金縮小も需要を冷やしている。
特に欧州では、ドイツが2023年末にEV購入補助金を打ち切ったことで、2024年1月のEV販売が前月比で約50%減少した。フランスでも補助金の対象車種が絞られ、影響が出ている。
市場調査会社IHSマークイットのアナリストは「2025年までは需要の踊り場が続く可能性が高い。メーカーは過剰投資を避けつつ、競争力のある車種を投入するバランスが求められる」と分析する。
長期的なEVシフトは継続
一方で、長期的なEVシフトの方向性に変わりはないとの見方が強い。国際エネルギー機関(IEA)は、2030年までに世界の新車販売に占めるEVの割合が35%に達すると予測している。
各メーカーも研究開発投資は継続しており、次世代バッテリーや充電技術の開発競争は続いている。今回の生産調整は、過度に楽観的な計画を現実的な水準に引き下げる一時的な調整との見方が支配的だ。
業界関係者は「EVシフトの流れは変わらないが、その速度は市場の実態に合わせて調整される」と総括する。



