中国の電気自動車(EV)大手BYD(比亜迪)が日本市場で苦戦している。2024年の年間販売目標2000台に対し、実際の販売台数は約150台と、目標の1割にも満たない水準だ。日本自動車販売協会連合会のデータによると、2024年1月から5月までの累計販売台数はわずか97台で、前年同期の約2倍に増えたものの、依然として低調である。
日本市場の壁:販売網とブランド認知
BYDが日本で直面する最大の課題は、販売網の未整備とブランド認知の低さだ。日本では、トヨタやホンダなどの国内メーカーが全国に広がるディーラーネットワークを持つのに対し、BYDの正規販売店は2024年6月時点で全国に約20店舗しかない。また、中国ブランドに対する消費者の信頼は依然として低く、品質やアフターサービスへの懸念が販売の妨げとなっている。
BYDの日本法人であるBYD Japanの担当者は「日本市場は非常に独特で、顧客獲得には時間がかかる」と述べ、長期的な視点で市場開拓を進める方針を示した。同社は2025年までに販売店を100店舗に増やす計画だが、現状では目標達成は困難とみられる。
価格競争力も限定的
BYDの強みである低価格も、日本市場では限定的な効果しか発揮できていない。同社の主力EV「ATTO 3」の日本での価格は約450万円で、日産の「リーフ」(約400万円)やテスラの「モデル3」(約530万円)と競合する。補助金を考慮しても、価格面での優位性は明確ではない。
一方、中国市場ではBYDが価格競争を仕掛け、2023年には年間販売台数で300万台を突破した。しかし、日本では輸入関税や輸送コストが加わり、価格競争力が低下している。
業界関係者は「日本市場はEV普及率が低く、充電インフラも不十分なため、EV全体の需要が限られている」と指摘する。2023年の日本の新車販売に占めるEVの割合は約2%で、中国の約25%や欧州の約20%と比べて大幅に低い。
今後の展望:戦略見直しの必要性
BYDは日本市場での苦戦を受け、戦略の見直しを迫られている。現地生産の検討や、日本企業との提携強化が選択肢として挙がる。また、2024年秋に発売予定の新型コンパクトEV「シーガル」は、価格を約300万円に抑えることで、若年層を中心に需要を喚起したい考えだ。
しかし、専門家は「日本市場で成功するには、単なる価格競争ではなく、ブランドイメージの向上と販売網の拡大が不可欠」と語る。BYDが日本で存在感を示すまでには、なお時間と投資が必要とみられる。



