東南アジアの自動車市場で、中国製電気自動車(EV)の存在感が急速に高まっている。特にタイでは、2024年のEV新車販売台数の約80%を中国ブランドが占め、日本車メーカーが長年築いてきたガソリン車中心の市場構造を揺るがしている。
タイ市場で中国EVが席巻
タイ自動車協会のデータによると、2024年上半期のEV販売台数は約4万5000台で、前年同期比で約2倍に増加。このうち、中国の比亜迪(BYD)が約1万5000台でトップ、長城汽車(GWM)や上汽集団(MG)が続く。日本メーカーでは日産がリーフなどで約2000台にとどまり、トヨタやホンダはHVやPHVに注力するもEV販売は伸び悩んでいる。
タイ政府は2030年までに新車販売の30%をEVにする目標を掲げ、購入補助金や輸入関税の減免などの優遇策を実施。これが中国メーカーの進出を後押ししている。BYDはタイに工場を建設中で、2024年内に稼働開始予定。長城汽車も既にタイで生産を開始し、現地調達率を高めている。
価格競争で優位に立つ中国勢
中国EVの強みは価格競争力だ。タイ市場でBYDの「アット3」は約80万バーツ(約340万円)から販売され、同クラスの日本車EVより20~30%安い。MGの「MG4」も100万バーツを切る価格設定で、若い世代を中心に人気を集めている。
一方、日本メーカーはHVやPHVのラインアップを強化する戦略だが、EVシフトの流れの中で後れを取っている。トヨタは2024年にタイで初のEV「bZ4X」を発売したものの、価格は160万バーツ超と高めで、販売台数は限定的だ。ホンダも「e:N1」を投入したが、同様の状況にある。
インドネシアやマレーシアでも中国EVの攻勢は続く。インドネシアでは2024年上半期のEV販売が前年比3倍に拡大し、中国ブランドがシェアの6割を占める。政府はニッケル資源を背景にEVバッテリー産業の育成を進めており、中国企業との連携を強化している。
日本メーカーの巻き返しは可能か
東南アジアは日本車メーカーにとって最大の収益源の一つで、タイやインドネシアでのシェアは長年80%以上を誇ってきた。しかし、EVシフトで中国勢に市場を切り崩され、日本メーカーの戦略見直しが迫られている。
専門家は「日本メーカーが東南アジアでEVシェアを回復するには、現地生産の拡大と価格競争力のあるモデルの投入が不可欠」と指摘する。トヨタはタイでEV生産を検討中と報じられており、ホンダもインドネシアでEV工場の建設を計画している。ただし、中国メーカーが先行する中で、巻き返しには時間がかかるとみられる。
東南アジアのEV市場は2025年以降さらに拡大が見込まれ、日本メーカーの対応が競争力の行方を左右する。



