今年7月に成立した改正個人情報保護法の目玉の一つに、AI(人工知能)開発や統計情報の作成が目的であれば、本人の同意を得ずに第三者に個人情報を提供できるようにする「統計作成等の例外」(以下「統計例外」)の導入がある。AI開発の促進が期待される一方で、同意なきデータ提供拡大への批判も起きた。問題はどこにあるのか。情報法の第一人者で元最高裁判事の宇賀克也・東大名誉教授に聞いた。
「統計例外」の評価は規則・ガイドライン次第
今回の「統計例外」についての評価を聞かせてください。
「制度の根幹となる条件の多くが、個人情報保護委員会がこれから作る規則やガイドラインに委ねられているため、その内容が固まらない限り、最終的な評価はできません。ただ、そこがしっかりしたものにならなければ、個人の権利利益が侵害される懸念があり、その点を注視しています」
「特に注視しているのが、(通院歴など)要配慮個人情報を含む個人データの第三者提供です。条文上は統計作成などの目的に限定され、違法な目的外利用には課徴金を課すことが定められていますが、実際にその通り運用されるかが課題です。この制度は事業者の認定制度が採用されず、手を挙げれば誰でも参加しうる仕組みです。統計を作成することになる提供先事業者が、十分なデータ処理技術をもっているかどうか、個人データを提供する事業者が十分把握できる仕組みが必要です」
統計例外の仕組みと懸念点
「統計例外」は、個人情報の取扱事業者が個人情報を目的外利用や第三者提供したり、要配慮個人情報を取得したりする際、原則として本人の同意を得ることが義務づけられているが、AI開発を含めた統計情報作成が目的であれば、この本人同意を不要とする特例だ。提供元と提供先の書面合意や、利用目的など一定事項の公表が義務づけられており、目的外利用は禁じられている。
宇賀氏は「かつて私は、内閣府統計委…」と述べ、過去の統計委員会での経験にも触れながら、制度の運用についての懸念を語った。この記事は有料記事です。残り3392文字。



