来年4月から家庭用エアコンの省エネ基準が厳しくなり、価格アップなどが予想される「エアコン2027年問題」をにらみ、中国メーカーが日本市場に安価な製品で攻勢を強めている。新基準を満たす6畳用の機種では、TCLが8万円を切る水準で投入し、国内メーカーの標準機より数万円安い。猛暑で生活必需品となったエアコン市場でシェア拡大を狙う。
中国勢の価格戦略
TCLは日本市場でのエアコン戦略について「世界規模の生産体制やAI(人工知能)スマートファクトリーを生かし、コスト競争力と品質を両立している」と説明する。同社は24年から日本向けに開発を進め、省エネ基準や消費者ニーズを検証して26年から日本市場に参入した。
同社が見据えるのは、政府による27年度からの省エネ基準引き上げだ。政府の狙いは脱炭素化で、6畳用では新基準機の年間光熱費が従来基準の製品より約2760円安くなると試算する。しかしエアコンは高性能化で製造コストが増え、特に安価な普及機の値上がりが懸念されている。
価格差と市場動向
国内の家庭用エアコン市場ではダイキン工業がシェア1位を維持しており、中国勢の影響力はまだ大きくないとみられる。ただ、テレビなどの家電で日本勢は中国勢にシェアを奪われてきた経緯があり、価格面の変動が予想される「27年問題」を機にエアコンでも同様の可能性がある。
27年度新基準を達成する26年モデルの6畳用で比較すると、中国メーカーではTCLが大手家電量販店の通販サイトで本体価格約7万7000円。ハイアールは8万円台で販売する。日本メーカーは、ネット通販専門店などで一部9万円程度の製品があるものの、量販店ではおおむね12万~14万円以上で、価格差は数万円に及ぶ。安価な型落ち品でも、中国勢の最新機より高い例が多い。
こうした中、猛暑でエアコンの需要は伸びている。日本電機工業会によると、26年上半期のルームエアコン国内出荷台数は前年同期比19.4%増の652万7000台。購入に当たり判断を左右するのが品質とともに、やはり価格だ。
国内メーカーの対応
大手家電量販店を展開するヤマダホールディングス(HD)の担当者は「4月ごろからエアコンの販売が前年同期を上回っている。新基準を前にした駆け込み需要や、アパート・マンション向けの大口需要を背景に、安価な商品の販売が伸びている」と語る。
国内メーカーも対応を急ぐ。ダイキン工業は27年モデルの全ラインアップで、新基準を100%達成する予定だ。パナソニックも一部の特殊仕様を除き、27年モデルを達成品に置き換える。同社は「日本の気候や暮らしに合わせた商品開発を続け、省エネ性や快適性など当社ならではの価値を磨く」と強調する。
家電などの価格比較サイト「価格.com」の鎌田剛編集長は「最も安価なモデルを中心に一定の値上がりとなる可能性がある一方、各社の開発努力で手頃な商品が増える余地もある」と指摘。「国内勢は日本の気候や住環境に合わせた設計と迅速なサポート網に強みがある。海外勢への急激な代替ではなく、消費者のニーズに応じた選択肢の多様化が進む」とみる。



