AI(人工知能)を活用した顔認識技術が、空港のセキュリティ強化に本格的に導入される見通しとなった。国土交通省は2025年までに国内の主要空港で実証実験を開始し、2027年以降の本格運用を目指す方針を明らかにした。この技術は、搭乗手続きや保安検査の効率化に加え、不審者の特定などセキュリティ向上に貢献すると期待されている。
実証実験の概要と目的
実証実験は、成田空港や羽田空港など国際線の利用者が多い空港で実施される予定だ。具体的には、チェックインカウンターや搭乗ゲートに設置されたカメラで撮影した顔画像と、パスポートのICチップに記録された顔写真をAIが照合する。これにより、本人確認の精度向上と処理時間の短縮を図る。国土交通省の担当者は「現在の有人による確認作業をAIが補完することで、セキュリティレベルを維持しつつ、旅客の待ち時間を削減できる」と述べている。
技術的な仕組みと課題
使用されるAIシステムは、深層学習(ディープラーニング)を基盤とした顔認識アルゴリズムを採用。マスク着用時や経年変化による顔の変化にも対応可能な精度を持つという。一方で、プライバシー保護の観点から、撮影した顔画像の保存期間や利用目的の制限が課題となる。国土交通省は、個人情報保護法に準拠したデータ管理を徹底し、第三者への提供は行わないとしている。
国内外の動向と今後の展望
海外では、米国や欧州の一部の空港で同様のシステムが既に導入されており、日本は後発となる。しかし、日本のシステムはより高い精度とプライバシー保護を両立させる設計を目指す。2027年の本格運用開始後は、年間約1億2000万人の航空旅客(2019年実績)のうち、少なくとも国際線利用者約2000万人が対象となる見込みだ。さらに、将来的には国内線への拡大や、駅やスタジアムなど他の公共施設への応用も検討されている。
期待される効果と懸念点
国土交通省は、この技術によって保安検査の待ち時間が平均30%短縮されると試算している。また、顔認証による自動化で、人手不足の解消にもつながると期待される。一方で、市民団体からは「監視社会の進展につながる」との懸念の声も上がっている。これに対し、同省は「利用はあくまで任意であり、拒否した場合も従来通りの有人対応が可能」と説明し、理解を求めている。



