あべのハルカス建設の覚悟:近鉄が貫いた「やると決めたら貫く」姿勢
あべのハルカス建設:近鉄の「やると決めたら貫く」覚悟

元近鉄広報マンの福原稔浩氏によると、あべのハルカスの建設は極めて難度の高い条件の工事だった。近鉄の現場には、「だろう」「よかろう」という判断は通用しないという共通認識がある。

「たぶん大丈夫だろう」「これくらいならよかろう」という言葉は日常生活では普通に使われるが、鉄道の現場では安全につながらない。むしろ真逆のものだ。鉄道は人の命を預かり、毎日何万人、何十万人という暮らしを背負って走る。そのため近鉄では、判断に感覚や雰囲気を持ち込むことは許されなかった。

「確認した」という問いかけ

現場で繰り返し投げかけられた言葉がある。「それは“大丈夫やと思う”やなくて、“大丈夫やと確認した”んか?」この問いは単なる注意や指導ではなく、近鉄マインドを守るための合言葉だった。近鉄マインドとは精神論ではなく、気合や根性でもない。むしろその逆で、判断を言語化し、根拠を確認し、次の人に引き継げる形にする極めて現実的で理性的な企業文化だ。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

近鉄マインドは「何かを成し遂げるためのスローガン」ではなく、「何も起こさない1日を守り抜くための姿勢」として存在してきた。日々ニュースにならない毎日の裏側には、鉄道マンの無数の「だろう」を排除した判断が積み重なっている。

近鉄グループの「森」としての姿

福原氏は近鉄という会社を1本の大樹ではなく、「森」として捉えている。鉄道、バス、不動産、百貨店、ホテル、観光、流通。それぞれが独立した事業でありながら、安全と確認という共通の根で確かにつながっている。どれか1つが突出するのではなく、勝手な判断をしない。森全体で風を受け止め、バランスを保つ。それが近鉄という企業集団の姿だ。

近鉄グループの歩みは常に地域とともにあった。鉄道を延ばすという行為は単なる路線拡張や収益確保ではなく、交通の行き届いていなかった土地に根を伸ばし、線路を通じて需要を届け、人々の暮らしの選択肢を広げ、未来への可能性を拓く営みだった。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ