セクター投資とは何か?
個別株とインデックス投資の中間に位置する「セクター投資」が、新NISAをきっかけに投資を始めた層を中心に注目を集めている。ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントのセクタースペシャリスト・山口美帆氏と、個人投資家YouTuberのロジャーパパ氏が、フリーアナウンサーの内田まさみ氏の進行で、その魅力と活用法を語った。
山口氏は「セクター投資とは、特定の企業ではなく、金融、不動産、情報技術といった産業を単位に投資する方法」と説明。米国市場ではGICS(世界産業分類基準)に基づき11セクターに分類されており、事業活動ベースで分類されるのが特徴だ。例えば、コミュニケーション・サービス・セクターには通信会社だけでなく、ネット配信プラットフォーム企業も含まれる。
なぜ今、セクター投資なのか?
S&P500などのインデックスはテクノロジー関連の比重が高く、その動きで全体が左右される。一方、セクターETFは11業種に分かれているため、自分のマーケットビューを反映させながら投資できるメリットがあると山口氏は指摘する。例えば、イラン情勢緊迫化時にはエネルギーセクターのパフォーマンスが際立ち、AI関連が弱含んだ際にはディフェンシブ寄りのセクターでヘッジすることも可能だ。
ロジャーパパ氏は「ETFはリアルタイム取引ができ、指し値も使える。1株から買えるので1万円前後で購入できるETFも多く、個人投資家に使いやすい」と評価。ステート・ストリートのセクターETFは総経費率0.08%と低く、100万円投資しても年間コストは約800円。投資信託にはセクター別商品がほとんどない中、ETFならすぐに購入できる点も強みだ。
11セクターの値動きの特徴
各セクターには明確な特徴がある。情報技術はインデックスと連動しやすい一方、エネルギーや公益事業、不動産、ヘルスケアなどはインデックスとの相関性が低く、値動きのブレ幅が大きい。ただし、個別企業の経営戦略などのミクロ要因に左右されにくいのも特徴だ。
ロジャーパパ氏は「コミュニケーション・サービスのセクターETF『XLC』は、メタやアルファベットに加え、AT&Tのようなディフェンシブ要素の強い通信会社も含まれ、分散が効いている」と具体例を挙げる。個別株とインデックスの中間で運用でき、配当利回りも比較的高いため、個人投資家にとって扱いやすいという。
プロが注目する3つの視点
山口氏はセクター投資で重要な3つの要素を挙げる。1つ目は「成長性」で、中長期的なセクタートレンドを見極めること。2つ目は「評価水準」で、期待が株価に織り込まれすぎていないか確認する。3つ目は「リスク要因」で、金利や資源価格、規制などの共通リスクが緩む局面が投資のタイミングとなる。
ロジャーパパ氏は長期保有するマイクロソフトがアンソロピックショックで売られた経験を踏まえ、情報技術セクターのETF「XLK」にはマイクロソフトのほかエヌビディアやマイクロンなどの半導体株が含まれ、全体としてリターンが生まれると説明。大型株中心の構成で安心感があり、長期保有に適しているという。
2026年の注目セクター3選
山口氏が2026年に注目するセクターは、情報技術、資本財、公益事業の3つ。いずれもAI投資が実装フェーズに入る局面で成長が期待できる。ステート・ストリートは2026年第2四半期に情報技術セクターのレーティングを「中立」から「ポジティブ」に引き上げた。年初の調整でバリュエーションに割安感が出たためだ。
資本財にはデータセンター構築や電力インフラなどAI設備投資の受け皿となる企業が含まれ、防衛や航空宇宙も組み入れられている。イラン情勢などに伴う防衛支出の増加も追い風となる。ロジャーパパ氏は「資本財セクターにはキャタピラーやレイセオン、ボーイングなどがあり、個別株では値動きが大きく難しいが、セクター投資なら入りやすい」と語る。
公益事業は従来ディフェンシブ銘柄とされてきたが、AIデータセンターの電力需要というテーマで再評価されている。情報技術セクターとの相関性が低いため、ヘッジとしての役割も期待できる。
適切な資産配分と始め方
ロジャーパパ氏はコア・サテライト戦略を採用。資産の8割をコアとしてS&P500のETF「SPYM」(総経費率0.02%)とゴールドETF「GLDM」に投資。残り2割をサテライトとし、その枠内でセクターETFを購入している。「自分が説明できる理由があるときに少しずつ買う。リスクを取る部分は少なめだが、実際に買うと勉強や経済ニュースへの関心が高まる」と効果を語る。
山口氏は「最初は少額で始め、見通しが悪くなったら減らして他のセクターに配分するローテーションができるのもセクター投資の良さ」とアドバイス。ステート・ストリートのセクターETFシリーズは1998年に設定され28年の実績があり、S&P500の11セクターのフルラインナップは同社のみ。平均取引量・流動性ともに高水準で、総経費率は業界最低水準の0.08%だ。
山口氏は「頻繁に売買する必要はなく、金利や景気、政策が変わったときに見直す程度で十分。経済ニュースを不安材料ではなく投資判断の材料として捉え、セクター投資に一歩踏み出してほしい」と締めくくった。



