予測市場アプリ「ミライマ」国内登場、電子マネー交換可で賭博該当性に議論
予測市場アプリ国内登場、賭博該当性に議論

選挙やスポーツの結果を予想し、金銭を賭ける「予測市場」が海外で人気となる中、国内でも金銭の代わりにポイントを賭けるサービスが登場している。元手となるポイントは無償で付与される一方、最終的に電子マネーと交換できる。日本の刑法が禁じる「賭博」に該当するか否か、専門家の間でも意見が割れている。

サッカーW杯で2万5000人が「賭け」に参加

6月15日、サッカーワールドカップ(W杯)北中米3か国大会の日本対オランダ戦。予測市場アプリ「ミライマ」では、2万5000人が「賭け」で盛り上がっていた。

アプリ内の広告視聴や友だち紹介などで獲得したポイント「コイン」が元手。前日午後10時頃のオッズは、日本勝利が約2・4倍、オランダ勝利が3・3倍、引き分け3・4倍だった。試合開始後もオッズは変動。オランダが先制点を決めると、日本勝利は9倍、オランダ勝利は1・4倍となった。コメント欄には約1000人が「オランダが98%とかになる前に買おう」「変動えぐすぎ」などと投稿した。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

登録者10万人超、若年層中心に拡大

ミライマは、日本で合法的に予測市場を楽しんでもらおうと、IT新興企業「Masentic(マセンティック)」(東京)が開発し、昨年11月にサービスを開始。政治や経済、スポーツなど幅広いジャンルを賭けの対象にしている。

利用者は、選択肢から結果を予想して好きなコイン数を賭ける。その時点で賭けられたコインが少ない回答はオッズが高い。的中するとポイントを獲得でき、アプリ内で、別の企業が手がけるギフト用ポイントに引き換えられ、インターネット上で電子マネーやギフト券などと交換できる。同じ趣味の人と交流できるため、若年層を中心に、登録者は10万人を超えた。同様のサービスは、IT新興企業や、モバイルゲーム事業を展開する企業も手がけている。

賭博罪該当性、専門家の見解分かれる

日本では、刑法で金銭の賭け事を禁じている。賭けた人は「賭博罪」、運営側は「賭博開帳図利罪」の摘発対象となる。マセンティックは取材に対し、弁護士に相談した結果、利用者に無償でコインが付与されることから、賭博にはあたらないと判断していると回答。最終的に電子マネーなどに交換できることについても「コインが直接電子マネーになるわけではなく、コイン自体に財産的価値はない」としている。

罪の成否を巡り、専門家の見解は分かれている。甲南大の園田寿名誉教授(刑法)は「賭博罪の成否は、参加者が財産を賭けるかどうかが大きい。無料で手に入るポイントであれば、財産を失う可能性がないので、賭博罪にあたらない」と指摘する。元東京高裁部総括判事の矢村宏・北海学園大法務特任教授(刑事訴訟法)は「最終的に電子マネーなどに交換できる場合、財産の損得を争っていることと変わりなく、賭博開帳図利罪や賭博罪に該当する可能性がある。一方で、少額であれば娯楽の範囲内で罪にならないとの解釈もあり得るだろう」と語る。

検察幹部の一人も、電子マネーになり財産的価値が生じる点を重視し、「摘発対象となりうる」とみる。実際に摘発するかどうかは、大金を得たいという欲を刺激する「射幸性」や、社会に与える悪影響の有無、程度などで判断するという。

一方、「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表は「違法なオンラインカジノは、無料のゲームを入り口に広まっていった。予測市場についても、アプリをきっかけに、利用者が金銭を賭ける海外サイトに流れていく可能性がある」と危惧する。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ

海外予測市場の拡大と倫理問題

予測市場は、米国の大手サイト「ポリマーケット」が2024年の大統領選でトランプ氏の優勢をいち早くつかみ、注目を集めた。約1400万ドルの利益を得た利用者もいた。金融派生商品として扱われており、ブロックチェーン分析企業「TRM Labs」の調査によると、予測市場全体で賭けられた総額は昨年1~6月の月12億ドル前後から、今年1月は200億ドル以上に増えた。

一方で、倫理上の問題が指摘されている。ポリマーケットでは、イラン領内で4月に撃墜された米軍戦闘機の乗員の安否が賭けの対象となった。X(旧ツイッター)で「不謹慎だ」と批判が広がり、ポリマーケットは賭けを取り下げた。米商品先物取引委員会は6月、暗殺やテロ、戦争を賭けの対象とすることを原則禁止する方針を打ち出した。

日本国内では、スポーツ賭博が問題となっている。スポーツ産業振興に取り組む一般財団法人「スポーツエコシステム推進協議会」によると、日本の居住者が海外の賭博サイトで違法に賭けた金額は少なくとも6兆4503億円で、このうち1兆183億円は国内スポーツが対象だった。この調査に予測市場は含まれていないが、一部の予測市場サイトは日本語でも記載されており、同協議会は予測市場についても同様の調査を行う方針。超党派の国会議員は、違法なスポーツ賭博の禁止徹底に向け、議論を続けている。