JR東日本総務が挑むDX「夕飯のおかずをもう一品」を目指すAdmin Connect
JR東日本総務DX「夕飯のおかずをもう一品」目指す

業務効率化の先にある「自分の時間」を取り戻す

「業務を効率化したところで、どうせ次の仕事が降ってくるだけじゃないか」――そんな諦めを抱くビジネスパーソンは少なくないだろう。しかし、JR東日本で始まったプロジェクトは、全く異なるゴールを掲げている。「早く帰って、夕飯のおかずをもう一品作りたい」――そんな個人の思いと組織の問題解決の両方を叶えるべく立ち上がったのが、非IT人材である総務担当者たちのコミュニティ「Admin Connect」だ。

10年の総務経験で感じた「同じ業務なのにバラバラ」という違和感

Admin Connectを率いるのは、情報システム部デジタル変革推進室の菊地祐子さん。菊地さんは入社以来、様々な部署で総務関連の業務を担当してきたが、その中である違和感を持ち続けていた。「同じ業務でも部署ごとに手法やツールが異なり、異動するたびに新しい方法を覚え直さなければならない状態でした」と振り返る。総務の仕事は会社を支える重要な役割だが、成果が見えにくく、業務改善の声を上げにくい。子育てなど時間的な制約を抱えながら働く社員も多い中、細かな業務の積み重ねが現場の負担になっていた。

生成AIを前面に出さない「モチベーションの壁」を越えた場づくり

社内のDX人材を育てる研修に参加したことをきっかけに「自分にもできることがあるのでは」と一念発起した菊地さんは、社内公募制度に応募し、デジタル変革推進室へ異動。以前から課題視していた総務業務の効率化に向けてAdmin Connectを立ち上げた。Admin Connectは、明田町本社の全部署から集められた24人の総務担当者を対象に、2025年9月に開始した。しかし、文系出身の非IT人材が大半を占めていたこともあり、まず直面した課題はデジタルやAIへの苦手意識だった。

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そこで菊地さんは、AIを活用するところから入るのではなく、「とにかく今、何に困っているか」「どの業務が面倒で、煩わしいと思っているか」を出し合うことから始めた。少人数のグループワークを取り入れ、発言しやすい場を醸成。また、初期に「宿題」を出して参加者の拒否反応を招いてしまった失敗から、月1回の集まりだけで取り組みが完結するよう工夫した。

そうした対話の中から、ある部署で構築されていた「Microsoft Formsを使った名刺発注の効率化」ノウハウがコミュニティ内で共有され、他部署へも一気に横展開されるなど、成果が生まれ始めた。「良い方法を知っている人が社内にいたのに、縦割りの組織風土が強く、共有できていませんでした」と菊地さんは語る。

生成AIは「壁打ち相手」として、業務フローの可視化と改善案の整理に活用

参加者同士が悩みやノウハウを共有できる土壌が整ったことで、生成AIが課題を整理し改善策を考えるための有効な手法として受け入れられていった。菊地さんは生成AIを「壁打ち相手」と表現する。最初から使い方を学ぶのではなく、言語化できない日々の業務でのモヤモヤを整理する。生成AIは、業務フローの可視化や改善案の整理を手伝う「壁打ち役」として活用している。現在は、休職者の手続きや各種リマインダー業務、転出入者対応など、身近で負担の大きい業務をテーマに4チームに分かれて標準化を推進。Microsoft 365の各種アプリを組み合わせた仕組みづくりにも挑戦している。

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DXの目的を再定義する「おかずをもう一品作る時間」のために

「効率化した時間は、会社のためではなく自分の人生のために使う」――この考え方がAdmin Connectの根底にある。菊地さんは「総務は『誰でもできる』『なんでも屋』と軽視されがちだが、その評価を覆すには、一人ひとりが業務改善に主体的に関わり、自分の時間を創出することが重要だ」と強調する。JR東日本では、この取り組みを「夕飯のおかずをもう一品作る時間」という具体的な個人の目標に結びつけることで、DXの目的を再定義している。