宮城県栗原市築館町の山あいの静かなまちに、高さ約6メートルの円筒形の白い建物が完成した。2025年11月、日本初となる2階建て3Dプリンター住宅が誕生したのだ。1階建ての事例はこれまでもあったが、2階建ては前例がなく、構造計算や法律の壁をどう突破したのかが注目された。
造形期間はわずか10日、延べ床面積約50平米
この住宅は、施工・オペレーションを担当した五十嵐理香さん、設計・施工・監理を率いた那須貴寛さん、そして施主の大場一豊さんの3人が主導。20社以上の技術者が協力し、3Dプリンターによる造形期間はわずか10日で完了した。外観は石造りの古代建築を思わせる一方、未来の建築物のような存在感を放つ。
内部は洞窟のようなワクワク感があり、扉のないアール型の開口部や吹き抜けのスリット階段で空間がつながる。延べ床面積は約50平米とコンパクトながら、1階に寝室、エントランス、バス、洗面室、トイレを配置。2階にはダイニング・キッチンがあり、曲面の壁に合わせて樹脂系3Dプリンターで造られた特注キッチンが設置されている。
なぜ2階建ては難しかったのか
これまで3Dプリンター住宅で2階建てが実現しなかった理由は、構造計算や建築基準法の壁にあった。3Dプリンターで積層した壁の強度や耐震性をどう評価するか、また階高や床荷重などの基準を満たす必要があった。那須さんは「誰もやっていないから、やってみたいという気持ちが原動力だった」と語る。
五十嵐さんはIT出身の女性起業家で、「やれることは全部やってみよう」と技術的な挑戦を束ねた。施主の大場さんは「宮城県でやるなら応援する」と地域の未来のために決断。地元企業や自治体の協力も得て、前例のないプロジェクトが動き出した。
技術と法律の壁を突破したプロセス
構造計算では、3Dプリンターで出力した試験体の強度データを基に、建築確認申請に対応。建築基準法の適合性を確認するため、専門家による審査を経て許可を得た。那須さんは「技術だけでなく、人の力で完成した」と振り返る。
住宅は現在、地域のシンボルとして注目を集めており、内覧会には多くの見学者が訪れた。今後の普及に向けて、コスト削減や施工期間の短縮が課題となるが、今回の成功は業界に新たな可能性を示した。



