日本の5G基地局整備は、世界の主要国と比較して大きく遅れを取っている。総務省が2024年3月に公表した資料によれば、2023年末時点での日本の5G人口カバー率は約60%にとどまっている。これは、韓国(約95%)、米国(約90%)、中国(約85%)などと比べて明らかに低い水準だ。
なぜ日本は5Gで遅れているのか
その理由として、まず基地局の建設コストの高さが挙げられる。日本の場合、既存の4G基地局を活用できるケースが少なく、新規に5G基地局を設置する必要がある地域が多い。また、周波数割り当てのプロセスが他国に比べて慎重で、時間がかかったことも影響している。
さらに、通信事業者の投資意欲にも課題がある。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社は積極的に投資を進めているものの、採算性への懸念から一部地域では整備が遅れている。総務省の担当者は「地方部での基地局整備は収益性が低く、事業者単独では進みにくい」と指摘する。
政府の補助金と今後の計画
こうした状況を受け、政府は2023年度補正予算で5G基地局整備のための補助金を拡充した。具体的には、地方部での基地局建設に対して最大で建設費の3分の2を補助する制度を設けている。総務省は2025年度までに人口カバー率を90%以上に引き上げる目標を掲げている。
しかし、目標達成には依然として課題が多い。基地局の設置場所の確保や、工事に伴う人手不足も深刻だ。ある通信業界関係者は「基地局工事の技術者が不足しており、計画通りに進まないケースもある」と語る。
5Gの普及が遅れる影響
5Gの普及が遅れることで、日本企業の競争力にも影響が出る可能性がある。自動運転やスマート工場、遠隔医療など、5Gの高速・大容量・低遅延の特性を活かしたサービスは、基地局の整備が進まなければ実用化が難しいからだ。
KDDIの技術責任者は「5Gは単なる通信速度の向上ではなく、産業構造を変える可能性がある。日本がこの流れに乗り遅れれば、国際競争で不利になる」と警鐘を鳴らす。
今後の展望
政府と通信事業者は、2025年以降も基地局整備を加速させる方針だ。特に、ローカル5Gと呼ばれる自営の5Gネットワークの導入促進にも力を入れている。これにより、工場や農場など特定エリアでの5G活用が進むと期待されている。
しかし、世界的に見れば日本の5G整備の遅れは顕著であり、巻き返しにはさらなる官民連携が不可欠だ。総務省は「今後も事業者と協力し、着実に整備を進めていく」としている。



