老化で緩むクロマチン、SIRT6が修復
イスラエルのバル=イラン大学やアメリカ国立老化研究所などの研究チームが、老化した肝臓の細胞を若い状態に戻す画期的な研究成果を発表した。この研究は、Nature Communicationsに掲載された論文「SIRT6 overexpression counteracts chromatin aging in the male murine liver」に基づくもので、特定の遺伝子の働きによって老化した肝臓のクロマチン構造を若返らせることがマウスで示された。
細胞内には、DNAがタンパク質に巻き付いて折りたたまれた「クロマチン」と呼ばれる構造体が存在する。若い細胞では、このクロマチンが整然と整理整頓され、必要な遺伝子だけが働くように制御されている。しかし、老化に伴ってこの秩序状態が緩み、閉じておくべきDNA領域が緩んで開いてしまったり、逆に開いておくべき領域が閉じてしまったりする。研究チームがマウスの肝臓を詳細に解析した結果、このクロマチンの緩みによって、老化に伴う炎症性のスイッチが入りやすくなり、同時にエネルギーを作るミトコンドリアの機能が低下してしまうことが明らかになった。
SIRT6過剰発現マウスで老化防止効果
細胞の働きを調節する遺伝子「SIRT6」は、これまでも健康寿命を延ばす役割があることで知られていたが、今回の研究でその具体的なメカニズムが判明した。生まれつきSIRT6を多く持つように遺伝子操作されたマウスを調べたところ、高齢になってもクロマチンの緩みが効果的に防がれていた。SIRT6は、DNAを巻き付けるタンパク質に起こる加齢特有の化学変化(アセチル化)を抑制することで、緩んだクロマチンの構造をしっかりと引き締め、若い頃と同じような遺伝子の働きを保つように機能していた。老化で変化した肝臓のDNA領域の約95%が、SIRT6によって若い状態に保たれた。
老化した肝臓を若返らせる逆転効果
さらに、SIRT6は老化の進行を防ぐだけでなく、すでに起こってしまった老化を巻き戻す(若返らせる)効果も示した。高齢(24カ月)にあたるオスのマウスに対し、特定の技術を使って肝臓の肝細胞に特異的にSIRT6を後から導入した。すると、導入後およそ1カ月の時点で、加齢に伴うクロマチンの緩みの約8割が元に戻り、若いマウスに近い状態へと若返ったことが確認された。
この研究成果は、老化による肝臓の機能低下を改善する新たな治療法の開発につながる可能性がある。研究チームは、SIRT6の働きを活性化する薬剤などが将来的に老化関連疾患の治療に役立つと期待している。
Source and Image Credits: Nagar, R., Schwartz, Z., Katz, A. et al. SIRT6 overexpression counteracts chromatin aging in the male murine liver. Nat Commun (2026). https://doi.org/10.1038/s41467-026-73115-y



