フェラーリの新型車「849テスタロッサスパイダー」にテネリフェ島で乗った。現代によみがえった「テスタロッサ」はV8ツインターボに3基のモーターを組み合わせるプラグインハイブリッド車(PHEV)だ。フェラーリらしさは味わえるのか、じっくりと試した。
現代のフェラーリで最もレーシーなモデル
フェラーリのラインアップは、本気で向き合わないとなかなか頭に入ってこない。かつてはクーペとスパイダーというシンプルな構図で、何年かに一度のペースでスペシャルカーが登場するだけだったが、近年は複雑になっている。ボディタイプの他に“アセットフィオラノ”や“スペチアーレ”、それに「フェラーリチャレンジ」というワンメイクで走らせる“チャレンジ”などがある。それに世界限定の特別仕様車も。
そこで、とりあえず通常モデルを整理すると「アマルフィ」「プロサングエ」「12チリンドリ」「296GTB」「849テスタロッサ」が名を連ねる。4ドアのプロサングエ以外には、オープントップが用意されている。今回、スペイン領カナリア諸島のテネリフェ島でステアリングを握ったのは、その中のひとつの849テスタロッサスパイダーである。
849テスタロッサは「SF90ストラダーレ」を進化させたもので、ラインアップの中で最もレーシーなモデルだ。849テスタロッサスパイダーはその屋根開きということになる。
パワーソース:V8ツインターボ+3モーターのPHEV
最もレーシーであることはパワーソースでわかる。ミッドに積まれるのは4リッターV型8気筒ツインターボで、それだけで830馬力を発揮する。ただ、これでは終わらない。このクルマはプラグインハイブリッド(PHEV)。同時に積まれるのは220馬力を発揮する3基のモーターで、システム合計1,050馬力となる。フロント左右に独立配置されたモーターとエンジンとギアボックスの間に設置されたモーターを、総電力量7.45kWhの高性能リチウムイオンバッテリーが動かすのだ。公表値の最高速度は時速330キロ、0-100km/h加速は2.3秒となる。モーターのみでの走行も可能だ。
スパイダーの屋根は電動格納式リトラクタブルハードトップが採用された。トップにはアルミニウムを使い、コンパクトサイズにすることで収納スペースを小さくし、軽量化を実現した。開閉時間は約14秒、時速45キロ以下であれば走行中も稼働可能だ。
1970年代風の意匠も?デザインを確認
そんな849テスタロッサスパイダーと現地でご対面した感想は、素直にカッコよかった。スーパーカー然とした佇まいは目を釘付けにする。リアルを見るのは東京で行われた発表会時のクーペを含めれば2度目になるが、今回の方が良い。そもそも写真では伝わりにくいデザインだし、こうして青空の下で見るとデザインのクールさと存在感の大きさが強調される。
デザインの特徴をデザイナーに伺うと、1970年代風のツインテールアーキテクチャーと今にもポップアップしそうな1980年代風ヘッドライトまわり、それとボディ後方に縦に入るバーチカルブラックバンドだと口にした。レトロなテイストをあえて加えることで、見る者のハートをくすぐるわけだ。フェラーリが表現するレトロモダンである。
ワインディングに入ると本性を発揮!
では走った印象に移ろう。ホテル内のゴルフクラブからスタートすると、しばらくして街中を走ることになる。そこで注意したいのはスピードバンプ。路面に盛り上がりをつけてスピードを落とさせるものだ。で、フロントの顎をすらないためリフターを多用する。すると反応は早く、大きなショックなくスッと乗り越えた。このあたりはスーパーカーブランドとしての一日の長だろう。ユーザーの求める使いやすさがある。
街から離れワインディングに入ると、このクルマの本性が徐々に姿を現す。パーシャルなアクセル操作を豪快にするとレスポンスはクイックになり、電動アシストで欲しいスピードがそのまま手に入る。
ドライブモードを変えるマネッティーノを「スポーツ」から「レース」にすると一段とそうで、エキゾーストサウンドとともに過激さが増す。直線が続く上り勾配では「ここはサーキット?」というくらいに加速し、サウンドが鳴り響いた。
エンジンとギアボックスの統合制御なので、パドルシフトは使っても使わなくてもいいが、あえて手を触れない方がおもしろい。フェラーリならではのセッティングをそのまま味わえるからだ。コーナー手前で強くブレーキを踏むときの減速は特にそう。歯切れのいいブリッピングで2段階ギアを落とした瞬間の気持ちよさはこの上ない。
といったパワーソースの威力は想定内だが、乗り心地が良いのをあらためて感じた。「スポーツ」もそうだが、「レース」モードでもゴツゴツしたところはなく、路面からの入力をキレイにいなしてくれる。これはセミアクティブダンパーを用いたマグネライドアクティブサスペンションが大きく関与していると思われる。これだけのパフォーマンスカーが上質な乗り心地を備えているのだから驚きだ。
試乗後のエンジニアたちとの談話では、この乗り味について話に花が咲いた。スパイダーはキャビン周りの剛性を高め、クーペに近い状態にすることでそれを得たという。
といったアドレナリンを分泌する走りを体験した後、冷静になってスパイダーの魅力を確認すると、屋根を開けた時の風の巻き込みは抑えているもののそれなりにあった。後方からキャビンに入る風だ。ただ、サイドからの進入は抑制される。オープントップモデルを進化させたのは確かだろう。でもって、醍醐味はエキゾーストサウンドをすぐそばで聴けること。スパイダーのシートがフェラーリサウンドの特等席であることは間違いない。ユーザーだけに許される特別な空間がそこにある。



