東洋経済の新連載「5Gが変える未来」第6回:地方創生
東洋経済新連載「5Gが変える未来」第6回

5G(第5世代移動通信システム)の高速・大容量・低遅延という特性が、地方創生の新たな切り札として注目を集めている。総務省が2023年度に実施した実証実験の結果、5Gを活用した遠隔医療、自動運転バス、スマート農業などの分野で具体的な成果が確認された。

遠隔医療で医師不足を解消

過疎地域での医師不足は深刻で、人口10万人当たりの医師数は都市部の約3分の1にとどまる。総務省の実証実験では、5G回線を用いた遠隔診療システムを導入。高精細な4Kカメラとリアルタイムのバイタルデータ伝送により、離れた場所からでも専門医が診断できる環境を整えた。実験に参加した秋田県の診療所では、月間の遠隔診療件数が導入前の約2倍に増加し、患者の通院時間が平均で往復2時間短縮された。

自動運転バスが公共交通を維持

バス路線の廃止が相次ぐ地方では、5Gを活用した自動運転バスの実証実験が進んでいる。栃木県の実証では、5Gの低遅延通信により、遠隔監視センターからリアルタイムで車両を制御。運行経費を従来の有人バス比で約30%削減できる見通しが立った。地元の利用者からは「通院や買い物の足が確保できて助かる」との声が上がっている。

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スマート農業で生産性向上

農業従事者の高齢化と後継者不足が課題となる中、5Gを活用したスマート農業が生産性向上に貢献している。宮崎県の実証実験では、5G対応ドローンによる農薬散布とセンサーによる土壌データ収集を組み合わせ、作業時間を従来比で40%削減。収量も約15%増加した。総務省の担当者は「5Gの高速通信により、複数の農業機械を同時に制御できるようになったことが効果を生んでいる」と説明する。

観光分野でも活用拡大

観光資源のデジタル化も進む。長崎県の実証では、5Gネットワークを活用したVR(仮想現実)観光ガイドを導入。観光客はスマートフォンで史跡の歴史的な姿を3Dで体験できるようになり、滞在時間が平均1.5倍に延びた。地元の観光協会は「これまで見学が少なかった場所への誘客につながっている」と評価する。

課題はインフラ整備とコスト

一方で、5G基地局の整備は都市部に偏っており、地方でのカバレッジ拡大が急務だ。総務省の調査では、2024年3月時点で人口カバー率は都市部で95%を超える一方、過疎地域では50%未満にとどまる。また、基地局設置コストは1基あたり数百万円と高額で、自治体の財政負担が課題となっている。総務省は2025年度までに過疎地域への基地局整備を加速する方針で、補助金の拡充を検討している。

5Gの地方創生への活用は緒に就いたばかりだが、実証実験の成果は確実に実を結びつつある。遠隔医療、自動運転、スマート農業、観光——各分野での成功事例を全国展開するためには、官民連携による持続可能なビジネスモデルの構築が不可欠だ。

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