初代「長嶋茂雄賞」に佐藤輝明を推す理由 怒りと悔しさをバットに込める姿勢
初代「長嶋茂雄賞」に佐藤輝明を推す理由

昨年6月に89歳で亡くなった元巨人の長嶋茂雄さんの功績をたたえるため、今季から「長嶋茂雄賞」が創設された。走攻守の活躍でファンを魅了し、プロ野球の社会的な価値向上に貢献した野手が対象となる。ファンに愛された「ミスタープロ野球」の系譜を継ぐ選手は誰か。個人的には阪神の佐藤輝明が近いのではと、勝手に思っている。

死球と乱闘騒ぎの中で見せた佐藤の闘志

7月17日からの広島3連戦(マツダ)は死球で大荒れとなった。17日は前川が死球を受けて右肩甲骨を骨折して戦線離脱。18日は佐藤もハーンからあわや死球という球を投じられた。その後は三振に打ち取られ、ベンチで怒りをあらわにしていた。そしてカード勝ち越しをかけた19日、同点の八回に佐藤はハーンから決勝二塁打。佐藤にしては珍しく、塁上で派手なガッツポーズを見せた。

ヒーローインタビューが印象的だった。「やられていたので、やり返せてよかった」「いろいろありますけど、もう勝って黙らせるしかないので」。怒りや悔しさは乱闘や報復ではなく、バットに込めたという心意気が感じられた。

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長嶋茂雄氏も同じ精神でプレー

同じようなエピソードが長嶋にある。1968年9月18日、甲子園での阪神戦だった。四回、阪神先発のバッキーが王に投じた内角球をめぐり、乱闘に発展。この騒動で負傷したバッキーに代わって左腕の権藤が登板したが、王の後頭部に死球をぶつけ、両チームは再びもみ合いとなった。殺伐としたムードで打席に入った長嶋は、権藤から左越え3ランを放った。歓声に包まれる甲子園。長嶋は「僕らはゲームの中で表現しなければいけない」とコメントしたという。この場面は実際に見たわけではないが、昭和の子供たちには有名な話だ。野球アニメ「侍ジャイアンツ」の中で取り上げられたからだ。南海との日本シリーズ中、大阪の南海ファンとトラブルを起こした主人公の番場蛮に「長嶋流けんか野球」を伝えるという設定で、甲子園の出来事が紹介されている。

選考基準は「記録より記憶」

長嶋茂雄賞の選考委員は王貞治、山本浩二、岡田彰布、栗山英樹、松井稼頭央の5氏。戦前の名投手、沢村栄治にちなみ、優れた先発投手に贈られる「沢村賞」は完投数や投球回数など、選考にはある程度の数字の物差しがあるが、長嶋茂雄賞にはない。印象による選考はなかなか難しいかと思われるが、記録よりも記憶に残るスターにちなんだ賞らしいともいえる。初代受賞者の候補は阪神の森下らの名前も取り沙汰されている。ただ、推したいのは佐藤だ。ミスターと同じスピリッツを持ち、打順の4番も守備位置のサードも同じ。受賞者の発表に注目したい。(鮫島敬三)

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