大勢の力士の中で一際目立つ長身が21歳の米沢龍だ。土俵という文脈では、比較対象となるのは総じてがっしりとした体格の力士たち。その中で、米沢龍の締まった体は「スマート」と評価される。ところがスーツ姿でスタジオに立つと、比較対象は一般人やスーツ姿の出演者に切り替わり、同じ体が「がっしり体型」側に評価が反転する。
文脈の違いが印象を変える
この現象は、テレビで見ると印象に残らない女優が、街角で実際にすれ違うと驚くほど魅力的に見える体験に通じる。テレビや映画では選び抜かれた女優・俳優という母集団が標準となり、そのレベルは高い。一方、街角ではごく普通の人々が標準となるため、同じ顔でも評価が変わる。米沢龍への驚きも、千代の富士の見え方の違いも、同じ仕組みによるものだ。
「ユニフォーム姿」が魅力的に見えるワケ
商品開発の現場でも似た力学が働く。無関係な2つのイメージが1つの姿に融合して現れると、人は強い違和感とともに注意を向け、その違和感を埋めようと情報を探したくなる。かつて著者が資生堂で開発に携わった制汗剤「Ag+(エージープラス)」は、「デオドラント」という機能と「銀イオン」という一見無関係な素材イメージを1つの商品名・パッケージに凝縮したことで、テレビCMなしで大ヒットした。米沢龍を「土俵に立つイケメンモデル」と表現するとすれば、この融合が生む磁力を人物に当てはめたものと言える。



